2-3 三千院の阿弥陀三尊像にお会いします
百花さん ここがお堂の正面。あっ、仏さまがちょっと見えています。あちらの仏さまが、今日拝観させていただく国宝の仏像なのね。
ゆいまくん そうだよ。三千院の往生極楽院本尊は阿弥陀三尊像で、2002年に国宝指定されたんだ。21世紀に入って最初に国宝となった仏像だよ。
お堂の前の階段下まで進むと、お顔はまだ見えないけど、仏さまがいらっしゃる、段を上がるとお目にかかれると思って、心ときめき、気持ちがはやるよね。って、あれっ?
百花さん (ゆいまくんを置き去りにして、先に入堂) 近っ! お堂にあげていただくと、本当にすぐ前に仏さまがいらっしゃるのね。中央に大きな仏さま、その左右にも。
ゆいまくん (百花さんに追いついて)すぐ前には美しい木の床に壇がしつらえられて、3体の大きな仏像が安置されているね。壇は低く、台座も低めなので、とにかく距離感が近い。阿弥陀仏の浄土はとても遠いところにあるとされているけど、でも、こんなに近くでお会いできる。ここに来た参拝者は皆一様に驚き、胸を熱くするんだ。
このお堂の本尊は阿弥陀如来像が左右に菩薩(ぼさつ)の像を従える形なので、阿弥陀三尊像と呼ばれる。中央の阿弥陀如来を中尊、脇の菩薩像を脇侍(きょうじ)というんだ。仏像はもちろん単独で安置される場合もあるけどが、このように三尊形式でまつられることも多いんだよ。そして、阿弥陀如来が中尊であれば脇侍は観音菩薩と勢至(せいし)菩薩というように、通常その組み合わせは決まっているんだ。
百花さん 3体の仏さまが組になっているから三尊なんだね。あ、そういえば、歴史の授業で、「法隆寺金堂釈迦三尊像」って出て来たのを呪文みたく覚えて、その時は何とも思わなかったけど、三尊ってこういうことだったんだ。わかってよかったー!
ゆいまくん …さて、こちらの阿弥陀三尊像は中尊、脇侍ともに座っている姿で、中尊の阿弥陀如来像の像高は230センチ余り。若干小ぶりだけど、丈六像 * といえるね。一方、脇侍の菩薩像は130センチほどの大きさだよ ** 。
漆と金箔で仕上げられ、美しく輝いているけど、この表面の仕上げは当初のものではなく、あとで補われたものなんだ。でも、つくられた当初もこのように金色に輝く姿だったと思うよ。
百花さん 緑が美しい空間にこじんまりした可愛いお堂。中には大きな仏さまがいらして、こんなにすぐ近くでお会いできる。とっても感動しました。今日、ここに来ることができてよかった!
で、この仏像はいつの時代につくられた像なの。
ゆいまくん この前拝観した法金剛院の阿弥陀如来像と近い時期につくられた仏さまなんだよ。
百花さん 法金剛院の像は仏師定朝の仏像の影響が強いということでしたが、こちらの仏像はどうなんでしょうか。
(注)
* 丈六は1丈6尺のことで、立ったときに約480センチの像高の仏像をいう。坐像だとその半分なので、三千院の阿弥陀如来像は若干小さめではあるが丈六像ということができる。
一方、脇侍の菩薩は丈六像の半分よりやや大きめだが、丈六像の半分の大きさ、すなわち半丈六像ということができる。
** 像高は中尊が233センチ、観音・勢至菩薩像はともに132センチ。