学行院の薬師三尊像・吉祥天像
古代の大寺院の残照

住所
鳥取市国府町松尾55
訪問日
2009年8月1日
拝観までの道
鳥取駅から日ノ丸バス中河原線で約40分。「吉野橋」バス停で下車し、東南に徒歩10分弱。バスの本数は1時間に1本程度。
→ 日ノ丸バス
拝観には事前連絡が必要。
拝観料
300円
お寺や仏像のいわれ
このお寺の前身は、古代創建の光良寺という。その仏像のまばゆさで、魚も川をのぼれなくなったという伝承が残る。
中世以後次第に寺運は傾き、江戸時代に大名の池田氏によって場所を数百メートル移した現在地に再興された。この時寺務を執った覚行の名にちなんで学行院という名になったと伝える。
しかしその後再び衰退して、今日では収蔵庫および休憩所が立つばかりとなっている。
本尊の薬師三尊像はもと12年に一度の開帳仏だったそうで、 管理をされている方のお話によれば、その際も直接拝観できず、鏡に写った仏の顔拝んだという。
拝観の環境
収蔵庫には薬師三尊像と吉祥天像が安置される。
収蔵庫の中は明るく、間近で、また側面も拝観できる。
仏像の印象
薬師三尊像は中尊は像高120センチ余りの坐像、脇侍は像高100センチ弱の坐像である。
中尊はどっしりとして、古様な感じがするものの、全体的には定朝様式を受容した地方仏と思われ、平安末期の作と思われる。
中尊は鷹揚な印象、一方脇侍像は背筋が伸び、上半身が高く、膝が左右によく張って安定感があり、三尊像としてのバランスがよくとれている。中尊像のお顔は角度によってやさしく微笑しているようにも見え、脇侍像は面長で引き締まった顔つきで、髻を低めに結っている。
台座は一部改変されているようだが、おおむね当初のまま。また中尊の光背も当初のものである。
吉祥天像は像高約120センチ、一木造の立像で、ほぼ直立する。バランスのよい美しい像である。体の奥行きは薄い。薬師三尊像と同様、平安末期くらいの作と思われる。
全体に保存状態はよい。このお寺のたどってきた険しい歴史を考えると奇跡のようである。
台座や持物は後補。
その他
本堂斜め前にたつ真新しい休憩所はもと「こもり堂」というお堂だったそうで、数十体の破損仏がガラスケース内に安置されている。
さらに知りたい時は…
『鳥取県の仏像調査報告書』、鳥取県立博物館、2004年
『鳥取県文化財調査報告書』第3集、鳥取県教育委員会、1963年