地蔵院の地蔵菩薩像
鎌倉御家人・佐々木高綱造立と伝える丈六仏
住所
倉吉市関金町関金宿1218
訪問日
2009年8月2日
この仏像の姿(外部リンク)
拝観までの道
倉吉市西南部にある関金(せきがね)温泉は、湯の質の良さから白銀の湯とも呼ばれる。数件の温泉旅館があるこの静かな温泉町の中に、地蔵院というお寺がある。
交通は倉吉駅から日交バス関金線で約35分、「関金温泉」下車、東南へ徒歩5分。バスの本数は1時間に1本程度。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれ
地蔵院は古代草創というが不詳。もと、近くを流れる滝川という小さな川の上流地域にあったが、江戸初期の山津波のためにこの地に移って来たという。
地蔵菩薩像は、収蔵庫に安置されている。この像も山津波で大破したが修繕され、その後、戦後にも修復を受けて、現在見るような姿によみがえった。その修復に先立って像内の支柱から江戸の修理銘が見つかり、それによると頼朝の命で佐々木四郎高綱が造像したと書かれている。
拝観の環境
収蔵庫は、雨天時は閉め、そうでなければガラス戸になっている。
事前にお願いしておくと中で拝観させていただけるので、ぜひそうするとよい。丈六仏の迫力や威厳、その一方で細部まで神経の行き届いた丁寧なつくりや安定感は、やはり近くで拝観させていただかないとわからない。
仏像の印象
丈六の半跏像。座高で約2メートル半、踏み下げた左足から頭頂までの全高では3メートル半をこえる。ヒノキの寄木造。
一見してその大きさと威厳にうたれる。しかしじっくりと拝観していると、決して威圧的でなく、落ち着いた作風であることがわかる。
上半身は高く、衣の流れは美しい。一方、顔は頬が張って若々しい表情である。斜め下から仰ぎ見ると、いっそう華やかである。右足先や、一方下げた左足の様子などすみずみまで神経が行き届いている。背面の腰から尻にかけての体の線は自然で写実的である。
平安後期の理想美を受け継ぎながらも、鎌倉らしい写実性を生かした像と思う。
その他
修理銘の入った支柱やそのほか江戸前期の修理で付け加えられ戦後の修復で取り除かれたパーツは、収蔵庫内右奥にガラスケースに入って展示されている。
さらに知りたい時は…
『鳥取県の仏像調査報告書』、鳥取県立博物館、2004年
『解説版 新指定重要文化財3 彫刻』、毎日新聞社、1981年