善通寺宝物館の吉祥天像
可憐さと威厳と
住所
善通寺市善通寺町3-3-1
訪問日
2015年7月26日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
JR土讃線の善通寺駅から西へ徒歩約20分。駅にはタクシーが常駐。
拝観料
500円(戒壇めぐり・宝物館の共通内拝券)
お寺や仏像のいわれなど
善通寺は空海の誕生の地という。
香川県(讃岐国)以外で生まれたとする説もあるようだが、一般的には讃岐西部の多度郡で生まれたとされる。善通寺の寺号は空海の父の名が善通であったことによるといわれるが、実際にはお寺の名前が先であったのかもしれない(空海の父の名は佐伯道長あるいは佐伯田公ともいわれる)。
いずれにしても、善通寺は空海生誕の地と信じられ、四国八十八ヶ所の第75番目の札所として多くの信者でにぎわいを見せている。
拝観の環境
善通寺の伽藍は、金堂や五重塔を中心とする東院と、御影堂(大師堂)を中心とする西院(誕生院)にわかれる。
御影堂の内陣が空海誕生の部屋と伝承される。非公開だが、地下の戒壇めぐりはその真下を通っているとのこと。
戒壇めぐりを終えて、御影堂の横手から順路どおりに進むと、宝物館に入場できるようになっている。
定期的に展示替えがあるようだが、吉祥天像などの仏像は常設となっているようで、ガラス越しだがよく拝観することができる。
仏像の印象
宝物館内に十数躰の仏像が安置されていた。奈良時代から江戸時代まで年代はさまざまで、小さな像が多いが、その中で平安時代の作である地蔵菩薩立像、吉祥天立像、毘沙門天立像の3像は比較的大きい。
なかでも魅力的なのは吉祥天立像である。
像高は約135センチ、カヤと思われる材を用い、一木より仕上げ、内ぐりもほどこさない。
まず目を引くのはプロポーションのよさである。腰紐を高い位置で結んでいるので、下半身が長く見える。手も長い。
顔はやや斜め下を向き、面奥をしっかりと厚くすることで、可憐ななかにも重厚さを出す。お腹を出し気味にして絶妙なバランスで立つ。
目は切れ長で、若干釣り上がり気味にし、鼻口は小さめにする。不思議と威厳ある雰囲気を感じる。
衣は全体にあまり襞を刻まないが、肩から下がる天衣の薄い様子や袖の脇の襞の重なり具合は像に豊かさを加えている。
その他
宝物館に入場すると、正面に塑造の如来像頭部が置かれている。50センチ弱の大きさ(髪際から顎までだと40センチ弱)があり、本来周丈六の仏像だったと思われる。創建時の金堂本尊の頭部であろうか。
表面の仕上げの土は失われて、表情は分かりにくくなっているのが残念である。
普段は見られないのだが、時期によっては国宝の錫杖頭が展示される。
錫杖の上部にとりつける部分で、金銅でつくられ、阿弥陀三尊像と二天が表面、裏面ともにつけられている。唐時代の作。空海がもたらしたと伝える名宝だが、不定期の公開。空海の誕生会が行われる6月半ば(6月13、14日)に展示されることが多いようだ。詳しくはお寺のホームページをご覧いただきたい。
さらに知りたい時は…
「善通寺の歴史と宝物」(『説話文学研究』44)、松原潔、2009年
『善通寺』(『週刊古寺を巡る』45)小学館、2007年
「善通寺の彫刻」(香川県歴史博物館編『 調査研究報告』3)、浅井和春・三好賢子、2007年
『善通寺』(展覧会図録)、香川県歴史博物館、2006年
『善通寺市史』1、善通寺市、1977年
『香川県の文化財』、香川県教育委員会、1971年