宣光寺の地蔵菩薩像
平安後期、片足を踏み下げた地蔵菩薩像の優品
住所
磐田市見付1340-1
訪問日
2007年11月3日
この仏像の姿(外部リンク)
拝観までの道
宣光寺は東海道線の磐田駅の北、約2キロのところにある。
磐田駅北口の1番バス乗り場から遠鉄バス80系統、遠鉄磐田営業所行きに乗車し約10分、「見付」バス停で下車して、徒歩約5分である。バスの本数は日中1時間3本程度。
バスを降り、一本北側の道(旧東海道、現在は見付宿場通りという名前)に出て左折すると、小さな川にかかる橋の手前に宣光寺の看板が見える。
そのほか、観光案内所で貸し出しているレンタサイクルを使うのも手である。
→ 遠鉄バス
地蔵菩薩像は、かつては60年に一度開帳という秘仏であったそうだが、現在では毎月24日(11月のみ23日で、この日が大祭)に開扉している。そのほか、事前に連絡すれば開扉していただける。
拝観料
志納
お寺のいわれ
磐田は現在ではサッカーチームの名前でよく知られるが、市内には100メートル級の古墳や国分寺跡があり、古代から栄えた場所である。近世には東海道五十三次の見付宿が置かれ、近代初期の擬洋風建築の学校なども残っている。
宣光寺は見付宿の中にある。かつては東海道を行き交う人々が立ち寄り、旅の無事を祈願したのであろう。地蔵堂内に残された江戸時代奉納の絵馬や算額がそのことを物語っている。
境内には徳川家康寄進の釣り鐘があり、身分を問わず多くの人の信仰を集めていた寺院であることがわかる。
拝観の環境
諸仏像は本堂向って左の地蔵堂に安置されている。堂内は明るく、拝観しやすい。ただし、地蔵菩薩像の前には台等が置かれ、全身を拝観することは難しい。
仏像の印象
像高約140センチの大きなお地蔵さんである。ヒノキの寄木造。全体に後補の彩色におおわれていて、写真で見ると違和感を覚えるものの、実際に拝観すると、それほどではない。
手に宝珠と錫杖をとり、左足を踏み下げる。 こうした片足を踏み下げた地蔵菩薩坐像は「延命地蔵」と称されることがあり、この像もそう呼ばれている。 この姿の地蔵像は11世紀から12世紀にかけて多くつくられ、この像も12世紀なかばのもの。像内の背部に銘があり、1160年に仏師讃岐によってつくられたことが書かれている。ただし、1160年の造立銘のあとに安土桃山時代の1578年の修理銘があり、造立銘も修理時の書き直しである。
顔は穏やかで、いかにも平安後期の美しく慈悲にあふれた造形である。正面に座って見上げると、ちょうどよい角度で尊顔を拝することができる。一方、体部や踏み下げた足は堂々としていて、存在感がある。調和のとれた優れた仏像である。
持物、両足先、裳先は後補。
その他
地蔵像の左右の厨子には、毘沙門天像、不動明王像が安置されているが、こちらは地蔵像以上に後補の彩色が強く、当初の像容をうかがうのがやや難しい。
また、江戸期の僧木喰作の大きな立像2体も安置されている。
さらに知りたい時は…
『磐田市史 通史編』上、磐田市史編纂委員会、1993年
『磐田市史 資料編』1、磐田市史編纂委員会、1993年