地持院と最明寺の仏像
由比駅近くのお寺に伝わる2躰の鎌倉仏
住所
静岡市清水区由比町屋原183−3(地持院)
静岡市清水区由比町屋原213(最明寺)
訪問日
2011年7月3日
この仏像(地持院)の姿は(外部リンク)
地持院について
東海道線由比(ゆい)駅下車。
広重の東海道五十三次の『由比宿』では、海からいきなり山が立ち上がっている様子が描かれるが、現在も由比駅の付近は海岸沿いのわずかなスペースに高速道路、国道1号線、JR東海道線、さらに2本の県道がひしめくように並ぶ。
地持院へは、その2本の県道のうち駅に近い方の道(静岡県道370号線)を北東へ10分くらい行くくと地持院の方角を示す案内がある。そこへ左折すると、まもなく豊積神社という古い神社の鳥居の前に出るので、右折。駅から徒歩約15分。
地持院は臨済宗のお寺。庭園や襖絵も有名で、座禅会や写経会などの行事も盛んなお寺である。
もと山の方にあったというが、近世になって現地に移転、隣接する豊積神社の別当寺であったそうだ。
仏像拝観はお願いすれば可能だが、事前連絡をしていく方がよい。志納。
地持院の地蔵菩薩像
本尊は地蔵菩薩像で、像高は約55センチ、ヒノキの割矧(わりは)ぎ造。
本堂中央のやや高い位置、ガラスの中の厨子中に安置されている。見上げる位置であるが、照明もあり、よく拝観できる。
像は鎌倉時代、厨子は室町時代のものということで、ともに市の指定文化財である。
顔はやや面長な印象。姿勢よく、正面を向く。目鼻だちは秀麗で、口はしっかりと結び、強い意志をあらわしているかのようである。耳は大きい。
上半身は大きくつくる。衣の襞(ひだ)は深くはないが、袈裟を固定する輪や左肩からつっている下着など、着衣を丁寧に表現している。
足にはやわらかな肉づきを感じさせる。右足を前にはずし、左足はひざ頭を左に大きく出して、動きを感じさせる。
鎌倉時代らしい豊かな造形の像と思う。
最明寺について
最明寺は、地持院と同じ臨済宗寺院。
地持院からは西へ、直線距離で400メートルほど。県道396号線の北側、西山という割烹旅館から北へあがった、駿河湾を望むまことに眺望のよい丘の上にあるお寺である。
地持院から徒歩約8分。由比駅からは徒歩約15分。
拝観は事前予約必要。志納。
最明寺は、13世紀半ばに活躍した北条時頼が開き、その後、13世紀後半に来日した中国の高僧、一山一寧が創建したと伝える。
禅宗では、本尊は釈迦、地蔵、観音などであることが多く、阿弥陀像であるのは珍しい。あるいは前身となる寺院があり、受け継がれた本尊であるのかもしれない。
阿弥陀如来像は、近世の達磨大師像などとともに本堂中央、ガラスケースの中に安置される。このガラスがなかなかレトロで波うっており、はじめやや見づらく感じる。しかし照明もあり、近い位置からよく拝観させていただける。
最明寺の宝冠阿弥陀像
像高は約60センチの坐像。ヒノキの寄木造。小像ながら、大像のおもむきある仏像である。鎌倉時代の作。
顔はやや四角ばり、目鼻立ちは中央に集まる。玉眼がすがすがしく感じられ、若々しい印象である。
まげを高く結い、宝冠の上に飛び出るほどである。なで肩。上半身は高くつくり、姿勢がよい。
衣を通肩に着て、襟もとで大きく折り返す。衣は体にぴったりとついているようにあらわされ、胸や腹の起伏をよくあらわしている。
さらに知りたい時は…
『静岡県史 通史編』2、静岡県、1997年
「最明寺宝冠阿弥陀如来像に就いて」(『MUSEUM』538)、大宮康男、1996年1月
「地持院地蔵菩薩坐像について」(『地方史静岡』23)、横田泰之、1995年