善名寺の薬師如来像
年に2日開帳の秘仏
住所
伊豆市吉奈128
訪問日
2010年4月4日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
善名寺(ぜんみょうじ)は伊豆半島のちょうど真ん中あたり、吉奈温泉というところにある。
交通は、修善寺駅から湯ケ島温泉、昭和の森、河津駅方面行き東海バスで「吉奈温泉口」下車、西へ徒歩15分。バスの本数は1時間に2〜3本。吉奈温泉まで乗り入れるバスもあるが本数は少ない。
吉奈温泉の「さか屋」と「東府屋」という2軒の老舗旅館の前を過ぎ、短い上り坂をのぼると善名寺を示す案内表示があるのでそこを右折する。
薬師如来像は本堂に向って右側の薬師堂にまつられている。秘仏で、4月第1日曜日と10月第2日曜日に開扉される(10時ないし11時から15時ごろまで)。
拝観料
ご住職は、善名寺は観光の寺でなく信仰のお寺であるとおっしゃていた。拝観でなく「お詣り」をしてほしいとのことで、拝観料というものもない。
お寺のいわれ
門や塀もなく、比較的小さなお寺だが、本来吉奈温泉はこの善名寺の門前町であったというから、元は大きな寺院であったらしい。
「善名」とは七仏薬師のひとつである「善名称吉祥王如来」からとった寺名と思われ、要するに薬師仏の寺院であることをうたっている(現在は日蓮宗寺院に転じている)。吉奈温泉の「吉奈」も「善名」から転じた地名と思われる。
かつてこの地には応天門の変(9世紀)で流された伴善男の館があったといい、そのために「館山薬師」とも称する。
拝観の環境
堂内は明るく、間近でよく拝観できる。
仏像の印象
薬師如来像は像高約150センチ、半丈六の坐像である。カヤの一木造。
威厳のある堂々とした仏さまである。螺髪が大粒で、髪際がくっきりとして、顔は四角い。体も大きなかたまりのようで、平安木彫の力強さを感じる。
衣の折り返しなどは、よく見ると細かく神経が行き届いている。足はしっかりと左右に張って、安定感がある。下肢を包む衣の襞は深く、力強い。
修理銘があって、室町時代と江戸時代に修復を受けているが、近年(2002年)にも修理が行われた。それ以前の写真を見ると腹部などいたみが進み、また後補の漆箔がまだらとなっていたが、面目を一新した。
左右には十二神将像が並ぶ。12躰揃っていて貴重だが、いくつかの時代のものが混ざっているようだ。これらの像も修復によって整えられている。
その他
このお寺には境内の不動堂内および本堂脇室の厨子内に破損仏が安置されているが、拝観できない。
本堂奥の位牌堂(本堂後室)には釈迦如来坐像が安置されていて、こちらは案内いただくことができた。半丈六の坐像だが、頭体のバランスや衣の表現などから薬師如来像よりは遅れての造像と思われる。
さらに知りたい時は…
『伊豆の仏像修復記』、牧野隆夫、吉備文化財修復所、2018年
『伊豆市の文化財』、伊豆市教育委員会、2006年
『善名寺蔵木造薬師如来坐像修理報告書』、吉備文化財修復所、2002年
『地方仏』2、むしゃこうじみのる、法政大学出版局、1997年
「伊豆善名寺の仏像群」(『三浦古文化』14)、鷲塚泰光、1973年9月