碩水寺の阿弥陀如来像
個性豊かな鎌倉仏

住所
筑北村坂北1044-1
訪問日
2025年3月6日
この仏像の姿は(外部リンク)
碩水寺の仏像
拝観までの道
碩水寺(せきすいじ)はJR篠ノ井線の坂北駅下車、東南東に徒歩15〜20分。お寺までは登り坂が続く。
拝観は事前連絡必要。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれなど
かつては真言宗だったらしいが、戦国時代に曹洞宗寺院として再興された。
火災のために古記録類など残されておらず、創建の事情などは伝わらない。
本尊の阿弥陀如来像は鎌倉時代の作。像内銘より造像年や仏師名が知られる。
拝観の環境
本堂内でよく拝観させていただけた。
堂内はやや暗い。お堂は南面し、晴天の日中は光が入るものの、本尊のお顔の表情は分かりにくい。
仏像の印象
本尊の阿弥陀如来像は像高約90センチの坐像。材はヒノキと思われる。寄木造、玉眼。来迎印を結ぶ。
独特の風貌の像である。顔はどちらかといえば細面で、ほおはあまり張らない。
眉はあまり高々とはあげず、目は力強く前を見据えている。鼻口が接近し、口もとは引き締める。口角は下がり気味に見え、表情はやや険しい。
肉髻は低い。螺髪の粒は大きく、目を引く。髪ぎわは中央を下がり気味としている。
ややなで肩。身体は横に広く、とても逞しい。脚部も左右によく張り、大きく丸々とつくられた膝頭も力強い。衣のひだは規則性があまりなく、洗練されているとは言い難いが、像の迫力をさらに増す効果があるともいえる。
身体を後ろにややそり気味にして、左右の手はしっかりと前に出している。
像内の背中側に銘文があり、1242年につくり始め、1244年に完成したことがわかる。つくり始めの年だけ、完成の年だけが書かれる銘文は多いが、この両方が書かれるものはあまりない。これによって約20ヶ月をかけて制作したことがわかる。一般的に等身大くらいの像であれば3ヶ月程度で仕上がるとされており、本像は長い時間をかけてつくられたことがわかる。
人名としては大勧進大法師と肩書きされる栄賢と、大仏師として僧永実の名が書かれる。残念ながら彼らについては、他の史料には見あたらず、どのような人物なのかは不明。また、願意などは書かれない。
このほか、像内には各時代の修理の記録も書かれているほか、小仏像が2体取り付けられているのだそうだ。
さらに知りたい時は…
『めくるめく 信州仏像巡礼』、信濃毎日新聞社出版部、2015年
『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代 造像銘記篇』6、中央公論美術出版、2008年
『長野県史 美術建築資料編 美術工芸』、長野県、1994年
→ 仏像探訪記/長野県