智識寺の十一面観音像
立木仏の系譜を引く
住所
千曲市上山田1197
訪問日
2014年4月13日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
最寄り駅は信濃鉄道の戸倉。
駅の南西の万葉橋で千曲川を渡り、南へ。県道55号に入って西へ、りんご畑の中、ゆるやかな上り坂を上っていくと右側にある。駅から徒歩で50分くらいの道のりである。
他の行き方としては、戸倉駅前に常駐するタクシー。
千曲市が運営する市内循環バスもある。中に「智識寺前」を通る便もある(上山田線の一部の路線)が、本数は少なく、日曜日は運休。お寺から駅の方に向かってゆるやかな下り坂を1キロくらい行った「女沢橋」の交差点を左折し、右側にある庁舎のところにも大循環線のバス停「千曲市役所上山田庁舎」があり、1日4~5便運行している。時刻を調べて、行きはタクシー、帰りはバス、あるいはどちらかは歩くなど工夫して行くとよいと思う。
拝観は事前連絡必要。ご住職は兼務住職のために、電話がつながらないことがあり、直前でなく、少し早めに拝観の相談をするとよい。
拝観料
200円
お寺や仏像のいわれなど
真言宗寺院。
仁王門をくぐり、正面に建つ大御堂(観音堂)は室町時代末期の再建。茅葺きの美しいお堂である。
拝観の環境
仁王門をくぐって正面が大御堂(観音堂)。本尊十一面観音像は内陣の正面奥の厨子中に安置される。
近くよりよく拝観させていただける。
仏像の印象
3メートルをこえる大きな立像。ケヤキの一木造で、素地をあらわし、ノミ跡も残して、また彫りも浅い。彫るという行為を最小限にとどめて木をなるべくそのままに使う、いわゆる立木仏としてつくられた像とも思われる。
肩幅が狭く、細身。特に下半身が長く、手もとても長い。腰を少し左にひねって、ゆらりとした雰囲気で動きをはらむように立つ様子は、どことなく鶴林寺の聖観音像を連想させる。ゆらゆらと立ち上がる気が形をとったような像である。
すぐ近くより拝観させていただけるが、そうすると見上げるようになり、あごが強調されて、力強い顔立ちに見える。鼻が大きく、それが正中線をわずかにはずしているために、かえって生気を感じさせる。
全体には素朴なつくりであるが、下半身は意外に繊細に彫られている。
頭上面のうち、頂上面は通例の仏面でなく髪を左右に垂らしているようで、女神像のようであるが、残念ながら拝観位置からは見えない。
その他
堂内にはほかにも仏像が安置されている。聖観音立像は鎌倉時代ないし室町時代の像、地蔵菩薩立像は江戸時代の作である。
境内の小堂に安置されている釈迦如来坐像は室町時代の像。
また、仁王門も大御堂と同じ室町時代の建物と考えられており、中に安置されている一対の仁王像も室町時代ごろの作である。
さらに知りたい時は…
『見仏記 道草篇』、みうらじゅん・いとうせいこう、KADOKAWA、2019年
「ほっとけない仏たち24 智識寺の立木仏」(『目の眼』491)、青木淳、2017年8月
『定本 信州の仏像』、しなのき書房、2008年
『長野県史 美術建築資料編 美術工芸』、長野県、1994年
『あづまみちのくの古仏』、吉村貞司、六興出版、1978年