大法寺観音堂の十一面観音像
愛らしさと気品
住所
青木村当郷2052
訪問日
2008年9月14日、 2023年9月16日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
上田駅前から千曲バス青木線に乗車し、約25分。バスはほぼ真西へ、この道は松本へと通じる国道143号線(松本街道)である。
途中、上田電鉄の上田原駅前を通る。
上田市から青木村に入ったところにあるバス停「当郷」で下車。北北西へ徒歩15分くらいのところに大法寺(だいほうじ)はある。バスの本数は1時間に1本程度。
→ 千曲バス・青木線
バス停から大法寺までは、案内板もあり、分かりやすい。最後は上り坂となる。正面に三重塔(「見返りの塔」と呼ばれ、美しい姿で有名)が見えてきたらあと少し。青木村郷土美術館(常設展示室で大法寺の塔の壁画の復元模写が展示されることあり)の先の石段を上がると拝観受付がある。
仏像の拝観(特別拝観)は事前申し込みが必要。
拝観料
1000円(拝観料300円+仏像の特別拝観料700円)
お寺のいわれ
寺伝によれば、奈良時代直前の大宝年間の創建で、古くは大宝寺と称したという。近くを古代の東山道が通り、浦野という駅(うまや)が置かれていたので、この駅との関係でつくられた寺であったのかもしれない。
拝観の環境
観音堂の本尊は十一面観音像である。2008年にうかがった際は、お堂中央の厨子(室町時代のもので、とても立派)中に安置されていたが、現在は後陣に移されている。
照明もあり、全身をよく拝観することができる。
仏像の印象
像高は約170センチの立像、カツラの一木造。背中からくりがあり、そこに金銅の毘沙門天の小像を納めているという。
顔は卵形で、頬からあごにかけての柔らかな丸みは魅力的である。眼はくっきりとは表さない。半眼よりもさらに閉じて、つぶったまぶたの丸みで表現されている。瞑想している様子なのであろうか。一方小さい口はやや開き気味である。愛らしさと気品をともに持った、一度見たら必ず魅了される顔つきである。
下半身が長く、衣のひだは浅く刻まれる。平安前期に見られる一木彫の仏像の衣の存在感を受け継いでいるが、全体のおとなしい印象から、平安時代後期の作と思われる。
その他
本尊の脇侍として、1メートル内外の普賢、文殊と伝える2菩薩が左右に安置されている。観音に普賢、文殊がつくという例はないので、おそらく元は別のお堂にあった像かとも思われるが、向って右の伝普賢菩薩像の方は、本尊と共通したつくりをしている。裙の結んだひもが長く垂れている様子など、とてもよい。
向って左の伝文殊菩薩像の方は時代は下るが、可愛らしい像である。
さらに知りたい時は…
『定本 信州の仏像』、しなのき書房、2008年
『一乗山大法寺写真集』(お寺発行の冊子)、2001年
『長野県史 美術建築資料編 美術工芸』、長野県、1994年
『仏像集成』2、久野健編、学生社、1992年
「謎の仏像を訪ねる旅」(『芸術新潮』1991年2月号)
「出現! 謎の仏像」(『芸術新潮』1991年1月号)