世尊院と善光寺大勧進の釈迦涅槃像
珍しい銅造の涅槃像
住所
長野市元善町475(世尊院)
長野市元善町492(善光寺大勧進)
訪問日
2024年6月30日
この仏像の姿は(外部リンク)
長野市文化財データベース(世尊院銅造釈迦涅槃像)
世尊院までの道
長野駅善光寺口(北口)の1番バス乗り場(善光寺方面行き)よりバス、「善光寺大門」下車。北へ進むと「仲見世」と呼ばれる参道に入る。
善光寺には仁王門、山門という2つの大きな門があり、手前にある仁王門をくぐる。さらにまっすぐに行くと山門を経て善光寺本堂へと至るが、世尊院へは仁王門を過ぎたら右手、仲見世と並行して南北に通っている東側の道(釈迦堂通り)に入る。にぎやかな仲見世通りに比べてこちらは人通りも少ない。
道の右側には善光寺の院坊(宿坊を兼ねている)が軒を連ねる。これらの中で、ひときわ目を引くきらきらと美しいお堂が世尊院(釈迦堂)である。
*善光寺各宿坊のご案内・世尊院
世尊院の釈迦涅槃像の拝観
世尊院の本尊、釈迦涅槃像はお堂の奥に安置され、前には緞帳のような垂れ幕がかかっている。
拝観はゴールデンウィーク、海の日、お盆中など無料の日があるが、普段の日は1000円(10人まで)で開帳していただける。その際、お寺やお釈迦さまの涅槃のことなどもご説明くださる。
堂内、近くより拝観できる。
世尊院の釈迦涅槃像について
釈迦涅槃像は銅造で、像高は約170センチ。銅の彫刻で等身大の涅槃像は全国でここだけと思われる。
寺伝によれば10世紀に越後の海で引き上げられたというが、実際には鎌倉時代の作。ただし、残念なことに19世紀末に火災にあい、体部の半分ほどは木で補っている。
涅槃像の安置方法として一般的であるのか、布団を重ねた上に置かれている。通例のように頭を北に、体の右側を下にして横になっている。頭は右手で支え、右ひじをぐっと張っている。鼻口はくっきりとつくられているが、目は閉じ、眠るが如くやすらかなお顔立ちである。
顔は斜め上を向くが、体は左の体側を上にして、横向きである。左腕は体の左側面に行儀よく伸ばす。右肩は出し、衣とその下にあるはずの肉体は、自然な様子でつくられている。
善光寺大勧進宝物館へ
世尊院から仲見世通りへと戻り、再び北へと向かうと、まもなく善光寺山門が見えてくる。その手前左側(西側)にあるのが、善光寺の本坊である大勧進である。蓮の池を渡り、門をくぐり、正面左の玄関より宝物館に行くことができる。
入館料は500円。
天台宗の大勧進は浄土宗の大本願とともに善光寺を管理しており、善光寺の宝物や資料を多数保管している。そのうち150点ほどが宝物館で展示されている。
宝物館は20世紀前半に開かれたというから、その歴史は100年を越える。
*大勧進宝物館・行在所
善光寺大勧進宝物館の釈迦涅槃像
宝物館は第一、第二と2つのエリアにわかれ、釈迦涅槃像は入ってすぐの第一宝物館ガラスケース中ほどに展示されている。近隣の博物館で仏教関係の展示が行われる際に貸し出される場合などを除き、常設展示されているとのこと。ケースごしだが、近くよりよく見ることができる。
本像も銅造だが、像高は約50センチと世尊院の像に比べてずっと小さい。鋳造の具合はとてもよい。衣のひだは等間隔につくられ、変化に乏しく、体つきも単調な印象で、制作年代は世尊院の像よりも後になるようだ。鎌倉時代ないし室町時代の作。
肉髻は低くつくり、螺髪の粒は小さい。髪際は中央でわずかに下がる。顔は四角張り、ややいかめしい印象がある。
世尊院の像と同様にお布団にのっている。全体に横向きというよりは斜め上に向けて横になっているようにも見える
その他(善光寺史料館の阿弥陀如来像)
善光寺境内の西北にある忠霊殿の1階(地階)に善光寺史料館がある。
忠霊殿というのは近現代の戦争で亡くなった方を仏式でまつるためのお堂で、1970年に改築されたものである。入館料は本堂と共通で一般600円。
史料館には、本堂北側に安置されていた仏像や近世につくられた大きな懸仏、近代に再興された仁王門安置の像のひな形、かつて山門に安置されていた羅漢の群像、また、奉納された数々の絵馬などが展示され、見ごたえがある。
なかでも素晴らしいのが、快慶風の三尺阿弥陀如来立像である。
善光寺は戦乱などに巻き込まれることが多かったため、絶対秘仏の本尊とその前立ち仏以外では古代、中世の仏像は伝わっていないとされていたが、鎌倉時代前期作の仏像として再発見されたのが本像である。ただし、この像がいつ、どのようにして善光寺に伝わることになったのかはわかっていない。
近年修復されて後世の塗りを除去し、素木のようの状態で展示されている。快慶本人の作と断定できる確証は得られず、一門の作との位置づけとなっているが、優美さとおごそかさが共存する美作である。
*善光寺主要施設
さらに知りたい時は…
『定本 信州の仏像』、しなのき書房、2008年
『長野県史 美術建築資料編 美術工芸』、長野県、1994年
→ 仏像探訪記/長野県