中志筑千手観音堂の千手観音像
11月初旬の「指定文化財一斉公開」で開扉

住所
かすみがうら市中志筑1325
訪問日
2017年11月5日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
茨城県南部のかすみがうら市では、11月初旬の土曜日・日曜日の2日間、指定文化財の一斉公開を行っている。
2016年からはじまったそうで、筆者が訪れた2017年の公開では、お寺や古民家など9ヶ所が公開されていた。また、市の歴史博物館でも関連展示が行われていた。
筆者がめぐったのは4つの寺院だったが、中でも印象深かった千手観音堂の千手観音像について紹介させていただく。
千手観音堂までは、石岡駅前より関東グリーンバス小幡線(柿岡車庫行き)に乗車し、「神社前」下車、すぐ北側。または土浦駅前より関東グリーンバス柿岡・土浦線(柿岡車庫行き)に乗車し、「中志筑(しづく)」下車、東へ徒歩約7分。
拝観料
無料
お寺や仏像のいわれなど
今はお堂と収蔵庫が建つばかりだが、本来は千手寺慈眼院という真言宗寺院であったとそうだ。道路をはさんで南側には須賀神社という神社があり、かつては千手寺の住職がこの神社の別当を兼ねていたとか。今は、須賀神社の総代が千手観音堂の管理をされているという。
お堂は、18世紀初頭に領主の本堂氏や近くの住民の寄付によって再建されたもの。本尊の千手観音像は鎌倉時代の像である。造像の経緯などは残念ながらわかっていない。鎌倉時代にこの地域をおさめていた武士は下河辺氏といい、本像もこの一族に関係する造像であったのかもしれない。
拝観の環境
千手観音像はお堂に向かって左側の収蔵庫内に安置されている。
庫内で、近くよりよく見学させていただくことができた。
なお、この指定文化財公開では、茨城大学の学生をはじめボランティアの方々が説明を担当するなど、活躍されていた。
仏像の印象
千手観音像は像高約190センチという実に堂々とした立像。寄木造、目は彫眼。
全体によく整い、また鎌倉彫刻らしい張りのある仏像である。
顔はあまり丸くせず、端正な表情が魅力的である。眉を高くあげて、麗しい。鼻と口は接近し、口は比較的小さめ。まげはあまり高くはしない。
衣は煩雑にならず、比較的おとなしい。
ほぼ直立するが、よく見ると左の膝をわずかに曲げ、また足を少し前に出しているが、それにともなう衣の揺れなどは表されない。
全体のバランスはとてもいい。過度にリアルを追求したり、衣をにぎやかにあらわしたりせず、上品で端整な仏像であるように思う。
その他
千手観音堂の北、徒歩数分のくらいのところにある長興寺も公開寺院である。
江戸時代このあたりを治めていた本堂氏ゆかりの寺院で、本尊に向かって左手の間に安置される不動三尊像は室町時代ごろの作。
また、東へ25分くらい行った文殊院では、古仏のほか、伝来する近世・近代の掛け軸なども公開されていた。
その後、同市の深谷というところにある真言宗寺院、法蔵寺を訪れた。
交通は土浦駅西口より玉造駅行きの関東バスに乗車し、「深谷」下車。バス停からすぐ。
本尊の十一面観音像は坐像で四臂という姿。鎌倉時代ごろの作で像高は約90センチ。ヒノキの寄木造、玉眼。
やや素朴な感じの顔だちで、親しみを感じる。条帛や下肢の衣のひだは深く刻み、右の足首のあたりに巻いたような衣の線ができているのがアクセントとなっている。
さらに知りたい時は…
『茨城彫刻史研究』、後藤道雄、中央公論美術出版、2002年
