戒壇院の盧舎那仏像
説法印、二菩薩を従える
住所
太宰府市観世音寺5-7-10
訪問日
2016年3月6日
拝観までの道
西鉄二日市駅から太宰府駅までのわずか2キロ半足らずを走る西鉄太宰府線。その唯一の中間駅である西鉄五条駅で下車し、北西に700メートルくらい行くと、観世音寺と戒壇院という2つの古刹が隣り合って建っている。
戒壇院の本堂内は正面の扉越しであれば日中自由に拝観可能であるが、あらかじめお願いしておけば堂内で拝観できる。
拝観料
堂内拝観500円
お寺や仏像のいわれなど
もとは戒壇院は観世音寺の一部であった。
奈良時代、鑑真が迎えられて授戒の制度が整い、中央に東大寺、東国では下野薬師寺、そして西国では筑紫観世音寺に戒壇が設けられた。この観世音寺の戒壇が現在の戒壇院のはじまりである。
戒壇院が観世音寺から別れて別の道を歩みはじめたは江戸時代のこと。この時以来戒壇院は臨済宗の寺院となったが、その伝統から江戸時代のうちは律僧がお寺を動かしていたという。その後完全に臨済宗のお寺となって、今日に至っている。
本堂は江戸時代の建物で、ここで座禅会も開かれるそうだ。
中央の石造り部分は奈良時代の戒壇のあとをそのままに用いているという。
拝観の環境
奈良時代以来のものという石の壇に上げていただき、ご本尊のすぐ前からよく拝観させていただけた。
仏像の印象
本尊の盧舎那仏像は像高約1メートル半の坐像。
整った螺髪やおだやかな衣の表情、薄い体の厚みなどの特色が見られ、平安後期ごろの作であると考えられる。
顔つきは穏やかであるが、斜め下から見上げた時のほおの豊かさや横に堂々と張った上半身は印象深い。
胸の前で両手を構える、説法印の像である。指は丸をつくることなく、左右の手を完全にはくっつけない程度に近づけている。
盧舎那仏像といえば、東大寺大仏や唐招提寺金堂本尊などが有名だが、作例は決して多くない。さらに説法印を結んでいる像というのは、他に類例がないのではないかと思われる。
その他
脇侍像は江戸時代中期の作の文殊菩薩像と弥勒菩薩像である。ともに地蔵菩薩のように僧形をした立像で、像高は約145センチ。
どのような教義によってこうした脇侍の像をつくり、補ったのであろうか。
さらに知りたい時は…
『福岡県の仏像』(『アクロス福岡文化誌』8)、海鳥社、2014年
『筑前太宰府 戒壇院』(九州の寺社シリーズ13)、九州歴史資料館、1994年