中山寺の仁王像
雄渾さと上品さ
住所
高浜町中山27-2
訪問日
2015年10月10日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
JR小浜線青郷(あおのごう)駅下車、または東舞鶴駅と高浜駅を結ぶ京都交通バス高浜線の「青公民館前」下車。
青郷駅の北で国道27号線を越え、北東へ。青郷小学校の北で関屋川を渡る。そこからさらに北へ上り坂を進んでいく。全体で徒歩25分。
「青公民館前」は国道27号線にあるバス停。すぐ北の青郷小学校の脇を通って関屋川を越え、北へ。徒歩約20分。
JR、京都交通バスともに本数が多くないので、よく確認の上予定を立てることをお勧めする。
拝観料
仁王像の拝観は自由(本堂拝観は400円)
お寺や仏像のいわれなど
若狭富士ともいわれる青葉山の東南中腹に建つ真言宗寺院。北陸三十三ヶ所観音霊場の1番札所。
古代に泰澄大師によって創建されたと伝える。もと天台寺院で一乗寺と称していたともいう。
南北朝時代の本堂は、鎌倉時代の馬頭観音像が本尊として安置される。また、仁王門の仁王像も鎌倉時代の作である。
拝観の環境
仁王像が安置されている山門は、正面と側面(門の内側)にガラスがはめられている。正面は外の光の反射のためによく見えない。門の内側から上半身を仰ぎ見る。
仏像の印象
像高2メートル半を越える9尺の仁王像。寄木造。
上品さと迫力をあわせ持ち、姿勢も一工夫あって魅力的な像である。
阿形像は両腕を横に張り、上半身の筋肉を強調する。横への広がりを強調しながら、前にぐっと迫力が飛び出てくるような印象である。
一方、吽形像は右手を顔の近くに、左手は斜め下へもってきて、腰を左(向かって右)に強くひねる。上下のラインを強く出しつつも、奥行きも意識しての造形である。
こうした姿勢の組み合わせの仁王像は他に例がないと思う。類型を嫌い、独自色を打ち出そうとした仏師の強い意欲が感じられる。
両像とも下半身の裳はあまり複雑なひだをつくらないが、手堅く自然な動きを見せている。
その他
観音像の中では珍しい部類に入る馬頭観音だが、若狭湾地方には比較的多く伝世している。海での仕事をなりわいとする人々が多かった若狭の人々にとって、方向感覚の備わる馬への畏敬の念が常にあり、馬頭観音をまつることが多かったのではないかという。
中山寺の本尊の馬頭観音坐像は秘仏で、33年に一度の開帳。
なお、同じ高浜町の馬居寺(まごじ、JR若狭和田駅から南に徒歩20分)には平安時代の馬頭観音坐像が伝来し、こちらは24年に一度の開帳の秘仏である。(ともに中開帳あり。また両像とも2014年、2015年の秋に特別開帳が行われた。)
このほか中山寺の仏像としては、本堂には江戸時代の馬頭観音像(前立ち像)や中世作の不動・毘沙門天像が、また位牌堂本尊として阿弥陀如来坐像(平安時代)が安置されている。
さらに知りたい時は…
『仁王』、一坂太郎、中公新書、2009年
『高浜町の美術工芸』、 高浜町教育委員会、1993年
『若狭の古寺美術』、「若狭の古寺美術」刊行会、1983年