箱根神社の万巻上人像
神か人か、霊威を感じる造形

住所
箱根町元箱根80-1
訪問日
2007年11月24日 2010年10月24日
この像の姿は(外部リンク)
箱根神社(宝物と文化財)
拝観までの道
芦ノ湖畔の元箱根バス停から西へ10分ほど歩くと箱根神社につく。
万巻上人像は宝物殿に展示されている。
→ 箱根登山バス
入館料
500円
神社や像のいわれ
万巻(満願とも)は、奈良時代から平安時代にかけて活躍した僧侶で、伊勢の多度神宮寺を開き、また常陸の鹿島神宮寺に住したことは平安初期時代の史料によって知られている。箱根神社に伝わる縁起によると、この社のはじまりも万巻によって開かれた箱根神宮寺であると伝える。
箱根神社宝物殿の開設は1907年という。その100周年を記念し、2007年1月1日、新装なった宝物殿が駐車場脇にオープンした。1階は受付、2階は常設展示室で箱根神社の草創から現代までを概観、3階の企画展示室は収蔵品を交替で展示するスペースにと、それほど規模は大きくないが、上手に構成されている。
拝観の環境
2階の展示の先頭、独立したケースに置かれ、正面からだけでなく側面からもよく見ることができる。
像の印象
万巻上人像は、像高は約85センチとほぼ等身大の坐像で、カヤの一木造。内ぐりは施さない。衣の襞(ひだ)の翻波式など、平安前期彫刻の特色を備える。力強い曲線で表現された耳や、下肢の肉付きなど、魅力的である。容貌魁偉で、加えて木の真ん中の部分を使っているため顔面に木目が波打つように現れ、さらに印象が強くなっている。関東における平安前期木彫の代表作であることは間違いない。両手先は後補だが、全般に保存状態はよい。
神秘的な雰囲気をもつ像であり、また仏像と同じように首に3本の筋(三道)を刻んでいるなど、肖像というよりは神像という雰囲気が強い。
その他
神社の裏手に万巻の墓(奥津城)といわれる石塔がある。
さらに知りたい時は…
『足柄の仏像』(展覧会図録)、神奈川県立歴史博物館、2023年
『日本美術全集』4、小学館、2014年
『日本の神様』、畑中章宏、理論社、2009年
『箱根の宝物』、箱根神社、2006年
「箱根神社蔵 万巻(満願)上人坐像」(『国華』1287)、薄井和男、2003年1月
『源頼朝とゆかりの寺社の名宝』(特別展図録)、神奈川県立歴史博物館、1999年
『かながわの平安仏』、清水眞澄、神奈川合同出版、1986年
『神奈川県文化財図鑑 彫刻篇』、神奈川県教育委員会、1975年