王福寺の薬師如来像
関東を代表する平安仏

住所
大磯町寺坂638
訪問日
2007年2月12日、 2015年5月6日
拝観までの道
東海道線の平塚駅より「松岩寺」を経由して二宮駅南口行きの神奈中バスは、大きく北側を回る路線である。新幹線の線路をくぐると、ずいぶんとのどかな風景が広がる。王福寺はこのバスの「上寺坂」か「王福寺前」バス停から徒歩数分のところにある。看板が出ていて分かりやすい。
バスは1時間に1本程度で、平塚駅からは20〜30分、二宮駅からなら15分くらい。
ほかに、平塚駅から松岩寺行きバスで「上寺坂」バス停を通るものがある。
拝観には事前の連絡が必要である(雨の日は拝観不可となる)。
拝観料
志納
お寺のいわれ
王福寺は寺伝では行基開創という古刹である。
もと、現在地より500メートルほど山側にあったという。
鎌倉幕府の公式記録である『吾妻鏡』の中に、北条政子の安産祈願がなされた相模27寺社のひとつとして名前が見える。
16世紀に火災にあい、そののち現在地に移ったという。
拝観の環境
本尊の薬師如来坐像は本堂に向って右手前にある収蔵庫(西面している)に安置されている。
外の光も入り、かなりよく拝観することができる。
仏像の印象
薬師如来像はカヤの一木造りで、像高約130センチの堂々とした坐像である。
背中と像底から内ぐりがあるが、くり方は浅く、材は厚みを持っているそうで、いかにも古様の彫刻である。平安中期までさかのぼる関東を代表する古仏である。
切れ長の目、豊かな頬、大きな耳、少し前に突き出し気味の口、しっかりと刻まれた衣文など、非常に魅力的である。顔つきは優しいというよりも、この時代の仏像らしく、厳しく引き締まった表情を見せている。
両膝は強く左右に張り出し、安定がよい。ややぶっきらぼうな彫りだが、この脚部の力強さは印象的である。左足を上にして組み、その下には三角のように衣が畳まれている部分が見える。
どの仏像もそれぞれに引きつけられるのだが、特に味わい深い仏像というのがある。この仏像はまさにそうした魅力ある像である。
螺髪は全部とれてしまっている。螺髪があればまた印象は違ったものになっているだろう。
白毫は後補。しかし、全体的には保存状態はよい。
さらに知りたい時は…
『日曜関東古寺めぐり』、久野健・後藤真樹、新潮社 、1993年
『芸術新潮』、1991年2月号
『神奈川県文化財図鑑 彫刻篇』、神奈川県教育委員会、1975年
