天養院の薬師三尊像
可憐な微笑みの平安仏

住所
三浦市初声町和田1669
訪問日
2010年7月4日
拝観までの道
京浜急行線の終点三崎口駅下車、北へ徒歩約30分。
バスは、JR横須賀駅か京急の横須賀中央駅から三崎口駅方面行きバスで「赤羽根」下車、東南に約5分。バスの本数は横須賀方面からは1時間に2本だが、三崎口駅からは本数が多い。
→ 京浜急行バス
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれ
天養院は浄土宗の寺院。創建は室町時代、本堂は江戸時代の再建である。
本尊に向って左の脇の間に平安時代の薬師三尊像が安置されている。もと、三浦氏の一族である和田氏がその鬼門の位置に設けた安楽寺の本尊であった像といい、この寺が20世紀に廃絶して移されて来た。
中尊は顔と胸から腹にかけて大きく割れているが、和田合戦の時に和田義盛への敵の太刀を替わって受け止めたからだという伝説をもつ。
拝観の環境
ガラス戸の奥に安置されているが、事前に連絡してお願いしておくとガラスを開き、明かりをつけて待っていてくださる。間近でよく拝観できる。
仏像の印象
ケヤキ(?)の一木造。中尊は像高約70センチの坐像。脇侍は約110センチの立像。手先など後補。また、台座も後補である。
中尊の顔つきがとても魅力的である。目鼻立ちはそれぞれが素朴な感じながら、微笑みを浮かべている表情がとてもよい。
肉髻は低く、地髪部から自然に高くなり、螺髪の粒は大きい。下半身の襞(ひだ)には翻波式の名残りが見られ、古様である。上半身は高く、膝は左右に大きく張っている。
腹の衣文の線は素朴である。
中尊は背中からくりがあるが、脇侍は内ぐりもなく、また天衣は膝のあたりを一本が横切るが、別の一本は背中を通っているようで、これも古様である。そうじて、古様さと地方仏の素朴さをもった、魅力的な像と思う。
脇侍像の顔は整い、また下半身は長く、プロポーションがよい。
さらに知りたい時は…
『運慶と鎌倉』、神奈川県立金沢文庫ほか、吉川弘文館、2024年
『三浦の文化財』第16集、三浦市教育委員会、1992年
『神奈川県文化財図鑑 補遺編』、 神奈川県教育委員会、1987年
『かながわの平安仏』、清水真澄、神奈川合同出版、1986年
「三浦市の仏像彫刻」(『三浦古文化』7)、上杉孝良、1970年3月
「和田天養院の薬師三尊像」(『三浦古文化』3)、渋江二郎、1967年10月
