豊財院の3躰の観音像
六観音のうちの3躰か
住所
羽咋市白瀬町ル8
訪問日
2009年10月17日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
豊財院(ぶざいいん)は羽咋駅から東へ5キロほどのところにある。
駅前より飯山経由七尾駅行き北鉄能登バスで「飯山」(いのやま)下車、徒歩約15分。バスの本数は1時間に1本程度。
→ 北陸鉄道グループ
ほかの手段としては駅前に常駐するタクシー。また、駅にはレンタサイクルもあるが、羽咋駅から七尾へと通じる道は道幅が狭いわりに交通量が多いので、注意が必要。
拝観は事前連絡必要。
拝観料
400円
お寺や仏像のいわれ
寺伝によれば、このお寺を開いたのは曹洞宗の第四祖である瑩山(けいざん)禅師という。
瑩山は能登における坐禅道場としてまずこの寺を開き、その後、永光寺(ようこうじ)、総持寺の順でお寺を開いていったと伝える。
永光寺はこの地で重きをなし、総持寺は永平寺とならぶ曹洞宗の大本山で、近代に横浜市鶴見区に移った。一方、この豊財院だが、檀家が十軒に満たないという小ささながら、平安時代の観音像3躰を所蔵する。
これら3躰は、もとはさらに北、能登半島中部の志賀町にあった観音堂に安置されていたが、江戸時代中期にこのお寺に移されたという。仏像は表面に傷みがあり、後補部分も多く、おそらく厳しい環境の中に長くあったものと思われる。
拝観の環境
仏像は本堂に向って左側の収蔵庫に安置されていて、間近で拝観させていただける。
仏像の印象
3躰の観音像はすべて等身大くらいの大きさの一木造の立像。ボリューム感があるので、もっと大きい像のように感じられる。
聖観音像を中央に、向って右に馬頭観音像、左に十一面観音像。作風は共通し、もともと1具であったと思われる。あるいは本来は六観音のセットだったが、3躰のみが伝わったのかもしれない。
その中で一番惹かれるのは馬頭観音像である。3面、6臂、忿怒の顔で、頭上に馬の顔が載る。怒りの表情で顔には凹凸ができ、口は少し開ける。後頭部は脇面をつけている関係もあるのだろうが、正面よりふくらみがある。
聖観音像は顔を大きくつくり、まげは低い。顔をわずかに上に向け、少し腰をひねる。
十一面観音像はやはり顔を大きくつくり、面奥も深くとる。腰の厚みも堂々としている。衣の襞の彫りは浅めだが、翻波式衣文の名残りも残す。
聖観音像、十一面観音像ともに顔つきはくっきりとせず、はじめぱっとしない印象だが、しばらくお顔を見ていると次第に笑っているとも、悲しんでいるとも見え、様々な表情が交錯しているように感じられてくる。地方的な豊かな仏像と思う。
その他
3躰の観音像の左右には二天像が安置されている。中世の地方仏である。
さらに知りたい時は…
『ふるさとの仏像をみる』、内田和浩、世界文化社、2007年
『地方仏を歩く』2、丸山尚一、日本放送出版協会、2004年
『羽咋市の文化財(改訂版)』、羽咋市文化財保護審議会、1991年
『羽咋市史 中世・社寺編』、羽咋市史編さん委員会、1975年
「秋の豊財院」(『Museum』130)、荒川浩和、1962年1月