正覚院の阿弥陀如来像
もと気多大社講堂の本尊
住所
羽咋市寺家町ト92
訪問日
2009年10月17日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
正覚院(しょうがくいん)は七尾線の羽咋(はくい)駅から北へ4キロくらい。
駅前から富来方面行き北鉄能登バスで「一の宮」下車。バスの本数は1時間に1本程度。下車後、徒歩5〜10分。
→ 北陸鉄道グループ
羽咋駅前にはタクシーが常駐している。また、駅にはレンタサイクルがある。
拝観は事前予約必要。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれ
羽咋市は能登半島の付け根にある街である。能登国の一宮であった気多(けた)大社があることでも知られるが、正覚院はその気多大社の西隣にある。もともとその神宮寺であったという。
六国史のひとつである『文徳実録』の855年に、気多大神宮に常住の僧を置くとの記述があり、平安前期からこの神社には神に仕える僧がいたことがわかる。中世〜近世初期の文書には正覚院を含む神宮寺数か寺の名前があるが、その中で正覚院のみが今日まで続く。
本堂に向って左側の阿弥陀堂(収蔵庫)に安置されている阿弥陀如来像は、もと気多大社の講堂の本尊と伝える。近代初期の神仏分離の際に寺から出されて打ち捨てられようとしていたものをこのお寺が引き取ったという。(講堂は売却され、別の神社の拝殿として現存するらしい。)
拝観の環境
お堂は明るく、中で拝観させていただける。正面は飾り物のために脚部は見えにくいが、斜めや側面からも拝観できる。
仏像の印象
像は、全体的には穏やかな風貌と流れるような衣の襞(ひだ)をもつ定朝様式の仏像である。
肉髻は高く、螺髪は小粒で美しい。正面の生え際はわずかにカーブする。
目は少しつり上がり、また頬が少し張るなどなかなか力強い表情で、単なる定朝様の写しでなく、地域性というか、能登の豊かな自然の中に根付いたような豊かさといったものを感じる。角度を変えて拝見すると、また印象が変わる。
体は姿勢よく、ゆったりと座るが、側面から見ると胸が薄い。衣の襞の彫りもいかにも薄く、左の脚部側面など省略が進む。
その他
このお寺には2つの懸仏が伝わっている。やはり神仏分離の際に神社から追い出されたものらしい。とても大きいこと、八角形をしていること、鳥居を立体的に州浜座の上に立てていることなど、珍しい作である(大きい方は直径が1メートル半以上ある)。
中央には日輪、左右に将軍地蔵と不動尊、鳥居の左右には狛犬が置かれる。もう一方は、十一面観音像を中央に左右に水瓶、そして鳥居と狛犬をあらわす。州浜座に加賀前田家の紋である梅鉢が見えるところから、前田家から気多神社に寄進されたものと思われる。本堂脇の護摩堂に安置され、お願いすると拝観させていただける。
さらに知りたい時は…
『羽咋市の文化財(改訂版)』、羽咋市文化財保護審議会、1991年
『羽咋市史 中世・社寺編』、羽咋市史編さん委員会、1975年