赤後寺の千手観音像と菩薩立像
「コロリ観音」として信仰されてきた2像
住所
長浜市高月町唐川1055
訪問日
2016年11月6日
この仏像の姿は(外部リンク)
長浜・米原を楽しむ観光情報サイト
拝観までの道
北陸本線の高月駅と木ノ本駅間の西側の平坦な地形の中に、こんもりと高くなっている場所がある。標高200メートルほどの小山で、涌出(ゆるぎ)山という名前が仏教的であるように思えゆかしい。古墳群もあるらしく、古代から大切な場所であったところのようだ。「いこいの森」としてハイキングコースも整備されているという。
この山の南側斜面に日吉神社と赤後寺(しゃくごじ、唐川観音堂)がある。
神社とお寺が一体となっていて、地域の方が管理している。
木ノ本駅からは西南2キロほど、高月駅からは北北西3キロ半くらい。いずれの駅にもレンタサイクルがある。
拝観は事前連絡が必要だが、拝観担当の方が複数いらっしゃるので、その日でも対応してくださる場合がある。
拝観料
300円
お寺や仏像のいわれなど
赤後寺の本尊は厨子中におさめられた2躰の菩薩像である。かつては秘仏であったそうだ。
他の湖北地方の仏像と同様、赤後寺の像も民衆によって戦火から守られたと伝わる。
秀吉と柴田勝家の賤ヶ岳の戦に際して、人々はこれら2躰の仏像を川に沈めて守ったという。その時にただ沈めるのでは申し訳ないと、頭の下に石を置いたといい、その「御枕石」と伝わる石が赤後寺の石段下に置かれてる。
「コロリ観音」「身代わり観音」などとよばれてきたそうだ。
「コロリ」は禍いを転ずる「転利」から来ているとのこと。祈ると苦しまずに彼岸に行けるとして、多くの信仰を集めていたことが、堂内に掲げられたたくさんの絵馬からも実感される。
拝観の環境
お堂正面の立派な厨子に、向かって左側に千手観音像が、右側には菩薩立像が安置されている。
近くよく拝観させていただける。
仏像の印象
千手観音像は像高約170センチの立像。菩薩立像は若干高くて約180センチ。
千手観音像の方が全体の印象として柔らかみが感じられ、菩薩立像の方が顔や体躯が四角張った印象である。ともに平安前期から中期にかけての仏像と思われるが、やや時代差があり、千手観音像の方が少し古い作なのだろう。
千手観音像は一木造で、樹種はヒノキという。背面からくりを入れている。
腕は現状は12本で、手先や頭上面は欠失。また、まげも後補となっている。
顔は小さめで、丸顔。目鼻立ちはくっきりして、ほおは丸みを帯び、顎は小さめである。額の上の髪の立体感や、額。眉から上まぶたへの面のやわらかい丸みが大変美しい。衣のつくりも鋭さよりも柔らかみが感じられる。奈良時代の塑像や乾漆像の盛り上げていく豊かな表現を木彫で再現しているという印象がある。
菩薩立像は大きなまげを結い、顔は四角張って、平面的な印象。体躯はどっしりとした重量感がある。
腰布を着ける。
腰を左にひねり、右足を軽く浮かせる姿勢は、若干ぎこちない。下げた右手は長い。
さらに知りたい時は…
『びわ湖・長浜のホトケたち』(展覧会図録)、 長浜市長浜城歴史博物館編、長浜市、2014年
『高月町史 景観・文化財編』分冊2、高月町、2006年
「滋賀・高月町日吉神社木造千手観音立像をめぐって」(『滋賀県立近代美術館研究紀要』4)、 高梨純次、2002年
『解説版 新指定重要文化財3、彫刻』、毎日新聞社、1981年
「日吉神社の二菩薩像」(『Museum」219)、田中義恭、1969年6月
→ 仏像探訪記/滋賀県