蓮海寺の地蔵菩薩像と橘堂の三面六臂観音像
湖に近いお堂にいます仏さま
住所
草津市志那町936(蓮海寺)
訪問日
2015年7月27日
この仏像の姿は(外部リンク)
蓮海寺への道
蓮海寺(れんかいじ)は草津駅から北東に5キロ半ほど。琵琶湖畔からすぐの場所にある。
草津市のコミュニティバス笠縫東常盤線のバス停「志那」下車すぐ。しかしこのバスは本数が少なく、日曜日は運休。
土地が平坦なので、駅南口にあるレンタサイクルを使うと便利。30分くらいで着いた。
地蔵菩薩を本尊とする尼寺だったが無住となり、すぐ近くの宗源寺の管理となっている。堂内には無病息災を感謝する額などが掲げられており、地域の方の厚い信仰を集めていることが知られる。
拝観は宗源寺に事前に連絡必要。拝観料は300円。
厨子の前にはられた金網越しの拝観だが、ライトもあり大変よく拝観できる。
蓮海寺と地蔵菩薩像
かつてはお堂のすぐ脇が琵琶湖に面した港で、東へ向かう志那街道の起点だったという。南北朝や戦国期には交通の要衝として兵馬もさかんに行き交ったというが、今は琵琶湖が後退し、その間には湖岸道路が通っている。
本尊の地蔵菩薩像は像高約160センチ。カヤの寄木造で、鎌倉時代の作。
以前は全身が黒ずんでいたそうだが、近年の修理で美しく整えられた。
頭頂部を大きくとり、目鼻はくっきりとしている。胸は抑揚を抑える。衣のひだはリズミカルにしっかりと刻む。
橘堂について
蓮海寺から東南、草津駅方面に1キロ半ほど戻ると、北側に西迎寺、南側に三大神社が向かい合わせに建っている。そこからさらに100メートル余り先(草津駅寄り)の北側に橘堂(観音堂)がある。
ほど近い宝光寺(天台宗)と関係があったらしいが、現在は独立したお堂で、吉田、白井という2つの家、あわせて6軒が長く管理しているのだという。
もとは髻(きつ、もとどり)堂といったり、結(ゆい)堂といったりしていたらしい。
本尊は珍しい三面六臂観音像で、その名の通り本面の脇に大きな2面をつけ、手は6本という姿の菩薩立像である。千手観音像としてつくられたものなのかもしれない(千手観音像は一般には42臂だが、そのさらなる省略形であらわされることもあるため)。
拝観には事前連絡が必要。志納。
近くよりよく拝観させていただけた。
三面六臂観音像の印象
像高は1メートル強。ヒノキの一木造で、内ぐりもない古様な構造である。
厨子中にあり、ほぼまっすぐに立っている。
厨子の中が金地であることも一因と思うが、浮遊感があり、特に前に座って斜めに見上げると虚空にすっと現れたのではないかと錯覚する。
全体の印象は大人しく、左右対称を意識しているが、裙の折り返し部分に強い陰刻線があって、アクセントになっている。
本面は優しく明快な顔立ちで、脇面は向かって右が忿怒相、左が菩薩相で、この脇面が大きいのが特色となっている。
さらに頭上面が付くが、後補。また手の部分も後補であるなど、のちに補修されたところも大きい。
その他
橘堂の東南500メートルほど南東(駅の方)にある宝光寺は、薬師如来像(平安時代)を本尊とする。秘仏で、33年に1度の開帳という。
さらに知りたい時は…
『近江路の観音さま』、滋賀県立近代美術館、1998年
『草津市史』1、草津市、1981年