梵釈寺の宝冠阿弥陀像
一番古い宝冠阿弥陀如来
住所
東近江市蒲生岡本町185
訪問日
2020年2月8日
この仏像の姿は(外部リンク)
梵釈寺ブログ・歴史案内
拝観までの道
梵釈寺(ぼんしゃくじ)は近江鉄道線の朝日野駅と朝日大塚駅の間にある。朝日野駅の方が若干近い。私は朝日大塚駅から歩き、20分くらいだった。
バスの場合、近江八幡駅南口から近江鉄道バスに乗車し、「蒲生岡本」または「ガリ版伝承館」で下車、東へ徒歩約10分。
拝観は事前連絡必要。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれなど
黄檗宗寺院で、江戸時代の創建。
本尊は平安時代の仏像であり、何らかの前身となる寺院があるのではとも思われる。桓武天皇が大津につくった同名の寺があり、それとのかかわりを指摘する意見もあるが、不詳。
本尊は袈裟を通肩にまとい、まげを高く結う、いわゆる宝冠阿弥陀如来である。かつては観音菩薩としてまつられていたそうだ。
拝観の環境
堂内でよく拝観できる。
仏像の印象
像高はおよそ120センチの堂々たる坐像。樹種はヒノキという。一木造で内ぐりはないようだ。平安時代前期~中期、10世紀ごろの作と考えられている。保存状態は全体によい。
目、鼻、あごを力強くあらわし、鼻と口を接近させ、口は小さめ。耳も豊かにつくる。眉も力強い。
髪は高く結う。ただしあまり太くせず、正面から見たところでは細く感じられる。
やや怒り肩。上半身は大きく、たくましい。胸から肩にかけては、衣のラインによって豊かな肉づきを表現している。
脚部は大きく張って、衣がしっかりとくるみ、緊張感に富む。ふくらはぎの量感や衣のひだの力強い彫りもすばらしい。
本像のような如来形だが螺髪とせずに結い上げ、衣は通肩(左右対称に近い形)にまとい、手は定印を結ぶ像は、宝冠阿弥陀如来と考えられる。平安時代前期に円仁によって唐からもたらされた常行三昧という行の本尊である。
同様の像は平安時代後・末期以後の作は知られる(栃木県の輪王寺、静岡県の伊豆山郷土資料館)が、それ以前にさかのぼる像としては本像だけである。
ただし、他の宝冠阿弥陀像では胸まで衣にぴちっという感じでくるまれているのに対して、本像は胸を大きく見せている点に違いが見られる。これをどう考えるべきであろうか。本像こそ円仁によって比叡山に伝えられた常行三昧の本尊のオリジナルに近い姿と考えるべきか。
いずれにせよ、本像は平安時代中期までさかのぼることができる宝冠阿弥陀像の異例として貴重なものといえる。
さらに知りたい時は…
『近江の古像』、高梨純次、思文閣出版、2014年
『藤原道長 極めた栄華・願った浄土』(展覧会図録)、京都国立博物館、2007年
→ 仏像探訪記/滋賀県