建部大社の女神像
愛らしいしぐさの神さま

住所
大津市神領1-16-1
訪問日
2013年10月26日
この像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
京阪電鉄石山坂本線の唐橋前駅より東へ徒歩約15分。
駅名にもなっている瀬田の唐橋を渡り、そのまま東へ。300メートルほど先の「神領」の交差点を過ぎると、まもなく左手に斜めに入る神社の参道がある。
バスでは、JR石山駅南口より近江鉄道バス神領団地線または野郷原線にて「神領建部大社前」下車。
女神像は本殿に向かって右手の宝物館内に安置される。
拝観は社務所に申し出る。
ただし、この女神像は神像の中でも名高く、展覧会等のために出張していることもあるとのことで、事前に連絡が必要。
拝観料
200円
神社のいわれなど
建部(たけべ)大社は9世紀の史書に登場し、また10世紀前半の「延喜式神名帳」にも高い社格の神社として登載される。近江の一宮(いちのみや)として由緒ある神社で、近江の国衙(建部大社の東側、現在の大津市大江6丁目にあった)にも近い。
祭神は日本武尊。
源頼朝が平治の乱に敗れて流される際、また源氏の再興を果たし上洛の折にもこの社に参詣したという。以後、武将たちからも厚い尊崇を集めた。
拝観の環境
女神像は宝物殿内のガラスケース中に安置され、よく拝観できる。
神像の印象
この神社に伝わる女神像は像高30センチあまり。割矧(わりは)ぎ造。12世紀ごろの作と考えられている。
口もとを右袖で隠すしぐさがかわいらしい像である。
中央から髪を左右に分け、下膨れの顔をしている。大きめの額、眉はしっかりとつくり、まぶたはややはれぼったいが、切れ長の目はかなりぱっちりと見開く。鼻は小さめである。
保存状態は必ずしもよくなく、左肩先を失い、下半身も後補材に変わっている。
この口もとを袖で隠す仕草だが、大切なことを伝えている姿、すなわち神が乗り移って言葉を伝えている巫女の姿であるもいい、また、神は容易にはその姿を現さないのだという本質を伝えるものともいう。
また、本像が祭神の日本武尊の妃のひとりで近江出身の布多遅比売(ふたじひめ)の像であるという社伝があることから、日本武尊の死を悼んでいる姿ともいわれる。
脇侍のようにして2柱の小さな女神像がつくが、これはもともと一具でなかったとも思われる。
髪を長くして肩に垂らし、ややうつむき加減で口をきつく閉じて、憂いを帯びたような不思議な表情である。
このほか、男女各1柱の神像も安置される。
さらに知りたい時は…
『すぐわかる日本の神像』、三橋健、東京美術、2012年
『琵琶湖をめぐる 近江路の神と仏 名宝展』(展覧会図録)、三井記念美術館、2012年
『日本の神様』、畑中章宏、理論社、2009年