書道博物館の石造菩薩半跏像
中国・南北朝時代の白大理石像
住所
台東区根岸2-10-4
訪問日
2008年2月11日、 2012年9月4日
書道博物館までの道
書道博物館は、洋画家であり書家であった中村不折が収集した書道関係資料を公開した施設で、現在では台東区立となっている。
場所は、鴬谷駅から北西に徒歩5分くらい。不折によって開館した頃は静かな界隈だったのかもしれないが、今はホテル街を抜けて行く。
月曜日は原則休み(祝日にあたるときは翌日)。そのほか、展示替え期間や年末年始はお休み。
入館料
一般500円
書道博物館の仏像
本館と新館よりなる。本館の第1室と第3室に、中国の石仏や金銅仏が展示されている。これらももともとは銘文が書道資料であるとして収集されたものであるが、その中には仏像としても優れたものが多い。
鑑賞の環境
展示ケースに入っているものは、角度等の関係で背面や銘文まで見えないものもある。
仏像の印象
書道博物館に展示されている中国仏像の中で特に筆者が好きな仏像が、白大理石の菩薩半跏思惟像である。第3室、南北朝から隋時代にかけての比較的小さな石仏・金銅仏が展示されているコーナー中、展示ケース下段に置かれている。
全高は50センチあまり、台座、頭光まで含め、保存状態は非常によい。台座裏に数十字の銘文があり、南北朝時代も終わりに近づく頃に成立した東魏という国の年号が書かれ、544年のものと分かる。このころ白大理石に仏像を刻むことが盛行したそうで、この像も全体にくすんだ色をしているものの、部分的に白色が見える。
顔は優しく、派手な冠をつける。肩から長く天衣(てんね)が伸び、左右対称のラインを描いて降下し、台座の側面に至る。胸は薄く、あまり前かがみにならない姿勢である。下半身のボリュームを落とし、そのために半跏思惟というバランスの難しい姿勢にもかかわらず極めて安定よくつくられている。全体に調和が取れた上品な像に仕上がり、長く見ていても見飽きない像である。
銘文について
ケース中に正面向きに置かれているので銘文は見えないが、解説パネルに銘文の拓本が紹介されている。それによれば、1行6字で10行、行間、字間をとってゆったりと書かれ、戎愛洛という人物の妻と娘が、上は皇帝、下は亡き父母と息子の供養のために、また衆生の成仏を願って造立したとある。
さらに知りたい時は…
『中国仏教彫刻史論』、松原三郎、吉川弘文館、1995年
『東洋美術3 彫塑』、長広敏雄編、朝日新聞社、1968年
『増訂 中国彫刻史研究』、松原三郎、吉川弘文館、1966年