水保観音堂の十一面観音像
存在感ある鉈彫りの仏さま
住所
糸魚川市大字水保字松衛
訪問日
2007年6月3日
この仏像の姿は(外部リンク)
糸魚川市役所・市内の指定・登録文化財(国指定文化財詳細)
拝観までの道
水保(みずほ)観音堂は糸魚川駅から東南方向にある。
駅前ロータリーの先にある1番のバス乗り場より、西海線(来海沢行き)バスで15分ほど、バス停「水保」で下車し、右手の道を10分くらい歩くと、観音堂につく。バスの本数は2時間に1本程度。
拝観は、事前に宝伝寺に予約が必要。
拝観料
1グループ5,000円
お堂について
ここはかつては大きな寺院(吉祥院あるいは水穂寺)であったというが、近代に入りこの観音堂を残して廃絶。観音堂は離れた場所にある宝伝寺に属することとなったが、実質的にはこの地域の方々がお守りしてきた。この日も、あらかじめ宝伝寺に拝観の予約をしておいたところ、地域の方が待っていてくださった。
観音堂は江戸後期の建物で、西国三十三観音像や羅漢像、如来像や天部像、二十八部衆や地獄図の額、神像彫刻など、とにかくさまざまな彫刻・絵画が並べられている。おそらく廃絶したお堂から持ち込まれたものも含まれているのだろうが、各時代の人々の篤い信仰心が感じられ、立ち去りがたい雰囲気であった。
拝観の環境
十一面観音立像は、お堂の裏手の収蔵庫に安置されている。像高は150センチほどで、等身大よりもこぶりな像である。収蔵庫の中まで入れていただけるので、間近で拝観できる。ただし、厨子の中に安置されているため、正面からのみの拝観となる。
仏像の印象
カツラの一木造で、腕まで共木で彫り出している。両手先は失われている。背中からがくりが施されているという。
全面に鑿(のみ)目がつけられている鉈彫りの仏さまで、横一列につけられた鑿痕が非常に整然としているため、鉈彫仏の中でも早い時期の仏像、平安中期ころの作と思われる。
顔や衣文をはじめ、頭上面が墨書されるなど、素朴な造形が非常に魅力的であった。
その他
日野資朝(すけとも、後醍醐天皇の忠臣で幕府打倒計画が漏れ佐渡に流され殺害された)の子が父の仇を討った際、その子をこの観音が守護し、追っ手から救ったという縁起が伝えられている。この観音の腕がないのは、その時身代わりになって切られたためという。
もっと知りたい時は…
「十一面観音像が戴く異形の頂上仏面をめぐって」(『仏教美術と歴史文化』、法蔵館)、津田徹英、2005年
「新潟・宝伝寺十一面観音立像」(『日本美術工芸』671)、井上正、1994年8月
『糸魚川市史1 自然・古代・中世』(糸魚川市役所、1976年)