常楽寺の阿弥陀如来像

鎌倉後期の基準作例

住所
半田市東郷町2-41


訪問日 
2024年10月12日


この仏像の姿は(外部リンク)
愛知エースネット・常楽寺と徳川家康



拝観までの道
常楽寺は知多半島の半田市にあり、最寄り駅は名鉄河和(こうわ)線の青山駅。下車後北へ徒歩約10分。ひとつ手前の成岩(ならわ)駅からも歩ける。


拝観料
志納


お寺や仏像のいわれなど
浄土宗(西山浄土宗)の寺院。知多半島におけるこの宗派の中心寺院で、かつては徳川氏との繋がりが深かった。
境内は広く、本堂もとても大きい。門の手前には4つの子院がある。二天像を安置する門は20世紀後半の再建。本堂は20世紀前半に焼け、その後再建されたものだそうで、その時期によく手に入ったものと驚かされるほどの素晴らしい柱を使って建てられている。
お寺の草創は15世紀後半だが、天台宗の前身寺院があったという。
本尊の阿弥陀如来像は近世に移入されたもので、それ以前の伝来は不明。

常楽寺ホームページ


拝観の環境
日中は本堂を開けてくださっているので、上がって拝観できる。ただし外陣から。堂内は明るいが、お堂が大きく、細部までよく見るのは難しい。一眼鏡のようなものがあるとよい。


仏像の印象
阿弥陀如来像は像高約80センチの立像。ヒノキの寄木造、玉眼。
肉髻は低く、螺髪は渦を巻いて作られている(一般に螺髪の渦は右巻きであるが、本像は左巻き)。髪ぎわは中央でわずかに下にカーブする。
目鼻立ちは控えめに彫られている。眉は高く上げず、鼻とくちびるは近いので、目鼻口が中央に集まっているように感じる。くちびるは薄い。斜め下からの角度ではとても優しい顔立ちに感じられる。
なで肩で、胸板は薄めである。胸元や肩の衣は装飾的で、写真を見るとやや煩瑣に思うが、実際には衣の線がくっきり鮮やかに彫り出されていて心地よい。下半身の衣の線は真っ直ぐに下がる。
来迎印を結び、右足をわずかに前に出している。

本像には銘文がある。場所は頭部内、額の裏側あたりらしい。長いものではないが、造像年が鎌倉時代後期の1263年であることと、作者が法橋円覚であることが端的に書かれている。
仏師円覚の系譜ははっきりしないが、鎌倉時代中期から後期にかけて奈良で活躍した善円(のち改名し善慶)に連なるものとも考えられている。


その他
半田市立博物館の常設展示室に本像のレプリカが展示されている。


さらに知りたい時は…
『鎌倉時代仏師列伝』、山本勉・武笠朗、吉川弘文館、2023年
『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代 造像銘記篇』9、中央公論美術出版、2013年
『愛知県史 別編 文化財3 彫刻』、愛知県史編さん委員会、2013年
「仏師円覚の二作例をめぐって」(『三浦古文化』43)、山本勉、1988年


仏像探訪記/愛知県