一宮市博物館寄託の阿弥陀三尊像
長隆寺の仏像

住所
一宮市大和町妙興寺2390
訪問日
2007年8月10日
館までの道
一宮市博物館は名鉄線妙興寺駅から徒歩10分ほど。禅寺の妙興寺に隣接している。
月曜日・年末年始など休館日あり。
入館料
300円(常設展)
仏像のいわれ
一宮市の南西部に長隆寺というお寺があるが無住となり、その本尊、阿弥陀三尊像が一宮市博物館に寄託されて、2階展示室で常設展示されている。
1990年前後に解体修理され、脇侍像から像内銘が発見された。
展示の環境
ガラスケースの中に展示され、とてもよく見ることができる。
仏像の印象
中尊は像高約150センチの半丈六像で、よく見られる蓮の上でなく、裳をかけた四角い座に座る。 ヒノキの寄木造。
はちきれそうな丸顔で、威厳のある表情、大きめの螺髪が魅力的である。鎌倉時代前期の特色に加えて、平安前期の仏像のような力強さが見える。定朝様式とは一線を画した新時代の仏像の姿を模索した仏師が、さらに一時代前の平安前期彫刻に見られるような特徴を学んで生み出したのだろうか。
光背には3体の化仏が飛び出すように付けられていて、面白い。膝は厚みがなく、衣文はそつなくまとめられている。
中尊が鎌倉前期の彫刻であるのに対し、脇侍は自由な衣の襞(ひだ)、高く結ったまげをもち、宋風が強く、鎌倉後期・末期の特色を示す。
観音菩薩像から像内銘が見つかっており、鎌倉末期の1323年に仏師良円によって造られたことが分かる。名前から円派の仏師と思われる。
像高は約180センチで、ヒノキの寄木造である。
その他1
脇侍像の作者良円による他の作例としては、和歌山県の遍照寺の弘法大師像(1294年)が知られている。
その他2(妙興寺について)
博物館の隣の妙興寺は大きな禅寺で、正式には妙興報恩禅寺といい、南北朝時代の創建。
寺の中心である仏殿には、釈迦三尊像が安置されている。創建時(14世紀なかば)からの本尊だが、室町前期(15世紀前半)に火災にあって大破し、大修理の末、再建された仏殿に安置されたという。
仏殿の扉のわずかに開いたスペースから中を覗くことができるが、大きなお堂であるため距離が遠く、どうにか拝観できるという程度である。
中尊の釈迦如来坐像は像高約1メートル。端正な顔立ち、なで肩ではあるが全体としてはブロックを積み上げたような四角い体躯、衣紋の独特のカーブ(特に左肩)から、中世の院派仏師の仏像の特色を備えていることがわかる。
脇侍は獅子と象に乗った文殊・普賢菩薩像で、中尊よりふたまわりほど小ぶり。文殊菩薩像の頭部内に「院遵」という仏師名が書かれた墨書きが見つかっている。
さらに知りたい時は…
『南北朝時代の彫刻』(『日本の美術』493)、山本勉、至文堂、2007年
『文化財フォーエバー』(一宮市博物館企画展パンフレット)、2004年
『一宮の文化財めぐり』、一宮市教育委員会、2001年(増刷改訂版)