光徳院の聖観音像
揺れる衣の美しい表現
住所
松山市高田797
訪問日
2009年3月28日
この仏像の姿(外部リンク)
松山市ホームページ・光徳院木造聖観音菩薩立像 木造阿弥陀如来立像
拝観までの道
光徳院は松山市北部、旧北条市内にある。JRの伊予北条駅の東南東、歩いて35分から40分くらいのところである。駅前にはタクシーが常駐している。
拝観は事前連絡が必要。
拝観料
志納
お寺のいわれ
創建は古代というが不詳。
鎌倉時代末に後醍醐天皇が中興したが、戦国時代に兵火にかかり堂宇は全焼し、かろうじて仏像を救い出したと伝える。
江戸時代前期に伊予の大名松平氏によって復興された。
拝観の環境
本堂内に平安時代の仏像2躯がまつられている。正面が聖観音像、その向って左が阿弥陀如来像である。
聖観音像はやや高い位置で安置されているが、すぐ前から拝観させていただける。
仏像の印象
聖観音像は像高160センチ余の立像。等身大だが、高い位置にまつられていることもあってか、大きく見える像である。一木造。
後補の宝冠で頭の形状はよく見えないが、十一面観音の姿をしているそうだ。ただし、髻の形などから、本来は聖観音像であったと考えられている。
プロポーションのよい、美しい観音像である。
片足をすこし遊ばせて腰をひねっているのは、われわれに向って近づき、救いの手を差し伸べてくださろうとしている姿であろうか。腰の動きにつれて下半身の裳の折り返しの部分が揺れ、向って左側に襞(ひだ)をつくっている。その揺れは風になって、私たちをやさしく包むかのようだ。
右肩からの天衣はゆらゆらと曲線を描きながら下ってゆく。下肢の衣文は鮮やかな翻波式である。平安前期彫刻の優品である。
その他
聖観音像の向って左に立つ阿弥陀如来像は少し小さい像高160センチ弱の立像で、ヒノキの一木造。太づくりで、上半身は四角いような印象。左肩から流れる衣は自然と体の中央に集まる。そこから衣の線はY字になって下に流れていくが、これは盛り上がる太ももを強調する表現なのだが、しかしこの像の太ももはそこまで太くはない。形式化した表現といえる。また、下肢の楕円形を描く衣の襞の繰り返しも形式化を感じる。
この像は近代以前は近くの国津比古命神社の本地仏としてまつられていたという伝えがある。
さらに知りたい時は…
『愛媛県史 芸術・文化財』、愛媛県史編さん委員会、1986年
『愛媛の文化財』、愛媛県教育委員会、1982年