岡山県立博物館展示の諸仏

  県内の仏像が多く寄託されている

住所

岡山市北区後楽園1-5

 

 

訪問日

2010年4月17日

 

 

この仏像(宝冠阿弥陀像)の姿(外部リンク)

岡山県立博物館デジタルミュージアム

 

 

 

岡山県立博物館までの道

有名な庭園・後楽園の外苑にある。後楽園入口のチケット売り場の向い側。

JR岡山駅前から路面電車(岡山電気軌道東山本線・東山行)に乗車し、城下(しろした)下車、徒歩約15分。または、岡電バス藤原団地行きにて「後楽園前」下車すぐ。

原則月曜日が休館。また、年末年始や展示替え期間もお休み。

 

岡山県立博物館

 

2020年より休館中。2022年10月ごろ、部分開館の予定。

 

 

入館料

常設展・企画展は一般250円

 

 

博物館の展示について

1971年に開館。県立の博物館としては比較的こじんまりしていて、4つの展示室からなる。

考古、仏教美術、備前焼や刀剣などさまざまなジャンルを入れ替えながら展示しているので、仏像展示も常設ではない。ホームページで確認してから出かけるとよい(2010年の場合は、春から夏にかけて第2展示室にて仏像の展示「岡山の仏像」が行われた)。

 

 

展示の環境

ガラスケース内の展示だが、一部の仏像はケースなしの状態で展示されていて、間近でよく鑑賞できた。

 

 

仏像の印象

この博物館は県内の多くの寺社からの寄託を受けていて、筆者が見学した時には県指定、市指定、未指定を合わせて10件ほどの仏像が並び、壮観であった。以下、その時に展示されていた仏像をいくつか紹介したい。

 

<倉敷市・宝島寺の天部像2躰>

宝島寺(ほうとうじ)は古代草創と伝える古刹。1985年の調査で、平安時代の天部像(一木造)2躰が見いだされた。

像高は140センチ前後。腕や足先は失われ、顔も摩滅が進んでいる破損仏である。1躰は内ぐりのある像だが、もう1躰は内ぐりもない古様な像であり、腰の量感や体のひねりなど力強い。

 

<倉敷市・素盞嗚神社の聖観音像>

倉敷市浅原にある素盞嗚(すさのお)神社本殿にまつられていた仏像。像高約140センチの立像で、材はケヤキらしい。平安時代。

筒型の高い冠をつけ、顔は穏やか。台座まで一木という古様さを見せる。すらりと長身で、折り返した裙、腰の下を横切る天衣、衣の襞(ひだ)の線は同心円状に広がって、心地よい。手先は失われ、その他破損が進んだ部分も大きいが、魅力的な像である。

 

<和気町・安養寺の阿弥陀如来像>

像高140センチの坐像。堂々たる半丈六坐像である。こんもりと高い肉髻、粒の小さな螺髪、高い上半身、やや低いがよく左右に張った下半身など定朝様の流れを汲みつつ、顔は引き締まって、鎌倉期に入ってからの造像と思われる。

 

<岡山県立博物館の宝冠阿弥陀像>

この博物館の所蔵となっている阿弥陀如来像は像高約80センチの坐像。一般的な阿弥陀像と異なり、まげを結い、通肩に衣をまとう。手は定印をつくる。いわゆる宝冠阿弥陀像(宝冠は失われているが)である。

顔は大きく、高々と髪を結う。頬は張って、体も脚部も堂々と、どっしりとして存在感ある仏像である。

元は吉備津神社の社僧寺のひとつ、青蓮寺に伝来した像という。

像内銘があり、鎌倉末期の1329年に仏師集賢によってつくられたことが判明している。

 

<矢掛町・捧澤寺の仁王像>

岡山県西南部の矢掛(やかげ)町にあった真言宗の古刹、捧澤寺(ぼうたくじ)。鷲峰山の中腹にあったこの寺は、1957年に山火事でほぼ全焼してしまった。愛染明王像など国指定文化財の絵画数点と離れたところに建っていた山門の仁王像は焼失を免れ、現在は県立博物館に寄託されている。

仁王像は像高約230センチ、中世の作。手足などかなり補修の手が入っているようだが、怒りをあらわにする顔や厚みのある上半身はなかなかの迫力がある。

 

 

さらに知りたい時は…

『仏像を旅する 山陽線』、斉藤孝編、至文堂、1991年

『岡山県史4 中世』岡山県史編纂委員会、1989年

『岡山県の文化財(二)』、岡山県教育委員会、1981年

『岡山の仏たち』、脇田秀太郎、日本文教出版、1972年

 

 

仏像探訪記/岡山県