清水寺の十一面観音像
美しき観音坐像
住所
富加町加治田985-1
訪問日
2008年4月12日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
清水寺という名前の寺院は全国にあるが、読み方は「きよみずでら」と「せいすいじ」の2種類があるようだ。この岐阜県富加町の清水寺は「きよみずでら」である。
本尊十一面観音像はかつては秘仏で3年に1度のご開帳であったらしいが、現在ではこの寺を守っていらっしゃる総代の方にお願いすれば拝観できる。
問い合わせは、富加町B&G海洋センター(文化財担当)へ(TEL 0574-54-2886)。
*ただし、上記の富加町「歴史と文化財探訪」によれば、現在は原則一般公開は行っておらず、成人の日の午前中に開扉されているとのこと。
交通は、以前は近くを路線バスが走っていたらしいが、現在は廃止されている。一番近い駅は長良川鉄道の富加駅で、そこから東北東方向へ歩いて50分くらいである。少し遠いが道は単純で、坂もなく歩きやすい。ただし、途中案内板等はないので、地図は持って行くほうがよい。
タクシーは駅前には常駐していないが、呼ぶことはできる。
拝観料
志納
お寺のいわれ
清水寺の門(楼門)は仁王でなく持国天・増長天が護る二天門である。門を入ると清流沿いに石段が続き、別世界に入るようである。段を上がりきると本堂の前に出る。
近年この寺から見つかった縁起書によれば、大和の僧延鎮が観音の奇瑞に逢い、坂上田村麻呂の後援を受けて開創されたのが当寺であるという。本堂内には田村麻呂像もまつられている。
拝観の環境
かつては本尊は本堂正面の厨子内に安置されていたが、現在では本堂裏の収蔵庫に移されている。厨子内にはかつてのお前立ちの観音像が納められ、その前で総代の方がお経を唱えてくださり、そののち収蔵庫を開いてくださった。
収蔵庫の中まで入れていただけるので、間近で、また側面や背面からよく拝観できる。
仏像の印象
本尊・十一面観音像は像高約90センチの坐像である。ヒノキの一木造で、平安時代後期の作と思われる。もとは漆の上に金箔で仕上げていたようだが、ほとんど剥落している。
きわめて美しい像である。胴は長く、どっしりした胸部とくびれた腹部で、それをしっかりと左右に張った脚部が受けている。非常にバランスがよい。
衣文は足にしっかりと巻いて緊張感をはらみつつも、端正で流麗な線をつくる。襞(ひだ)は浅いが、よく見ると小さな波をはさんでいて、翻波式衣文の名残りを見せる。
腰や足は、側面から見るとしっかりと肉がついている。
顔は丸顔で端正であるが、角度によって、また長い時間見ていると刻々と表情を変えるが如くである。
台座は当初のものらしい。豪華ではないが、平安時代後期らしい優品である。
さらに知りたい時は…
『飛騨・美濃の信仰と造形』(展覧会図録)、岐阜県博物館、2012年
『白華山 清水寺』(お寺発行の小冊子)、1992年
『仏像集成』2、学生社、1992年
『岐阜県の仏像』、岐阜県博物館、1990年