延算寺の薬師如来像
年1度、5月5日に開帳
住所
岐阜市岩井2-1-25
訪問日
2009年5月5日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
延算寺(えんさんじ)は、岐阜駅の北東、長良川を越えた丘陵地の裾野にあるお寺である。
岐阜駅・名鉄岐阜駅から岐阜バス加野団地線で約40分。岩井山かさ神行きで終点下車。または三輪釈迦行きバス、「岩井山かさ神口」で下車。バスの本数は平日1時間に1〜2本だが、土休日は若干本数が少ない。
→ 岐阜バス
延算寺の伽藍は本院と東院に分かれていて、ともに薬師如来をまつっている。
「岩井山かさ神」バス停から西へ数分のところにある本院の本尊は平安時代のお薬師様で、秘仏。年1度、5月5日に開扉される。
ご開扉の時間は10時から15時。ただし最初に法要と法話があり、これが1時間以上ある。延算寺は真言宗のお寺だが、この宗派の法要の中でも最も正式なものだそうで、何人ものお坊さんが声を揃え、なかなか壮観であった。法要の進行とともに参拝の方が増え、お堂は一杯になっていく。
法話のあと、本尊のすぐ前に進んで拝観することができた。
拝観料
特に拝観料の設定はなかった。
お寺や仏像のいわれ
このお寺を「かさ神」と称するのは、小野小町がかさ(瘡)という重い病にかかり、この寺の霊泉水によって治ったという伝説から。この泉が現在も延算寺東院にあり、湧いている。
本尊は因幡国の岩井というところで最澄が自ら彫った3躰の仏像のうちの1躰が因幡国(今の鳥取県)から飛来したと伝える。同じ話が因幡の方にも伝わっているそうで、何らかの真実が含まれている伝説の可能性がある。
飛来した薬師像を安置するために地元の農民がたらいを用意したので、たらい薬師と呼ばれた。この地を訪れた空海がこの薬師仏をまつるお寺をつくったのが延算寺のはじめという。
拝観の環境
やや暗いが、すぐ前から拝観できた。ただしお供え物のために、下半身は若干見えにくかった。
仏像の印象
秘仏の薬師如来像は像高150センチ余の立像で、一木造。
目鼻立ちのそれぞれがくっりと存在感を放ち、頬からあごにかけてのラインも力強い。螺髪は全部落ちてしまっている。肉髻は大きく、半球形に近い。右肩をあらわにし、左からからの衣の端がうねうねと折り返される曲線の様子や、左の腕の襞が細かく刻まれているのに対して下半身の衣はそれほど襞を刻まないなど、なかなか個性的で魅力ある像だと思う。平安中期ごろの作と思われる。
腰をしぼり、腹や太ももにはボリューム感がある。
左手に持つ薬壷は大きなサイズだが、これは後補。
さらに知りたい時は…
『因幡堂平等寺』(展覧会図録)、龍谷大学龍谷ミュージアムほか、2019年
「延算寺蔵 木造薬師如来立像」(『国華』1438)、岩佐光晴、2015年8月
『岐阜県の仏像』、岐阜県博物館、1990年
『岐阜県史 通史編 古代』、岐阜県、1971年