乙津寺の諸像
毎月21日にお堂開扉
住所
岐阜市鏡島1328
訪問日
2010年2月21日
拝観までの道
乙津寺(おっしんじ)は岐阜市の西部、長良川東岸にたつ古刹である。
交通はJR東海道線の西岐阜駅下車、北へ徒歩約20分。または岐阜駅、名鉄岐阜駅から岐阜バス岐阜高畠線、鏡島市橋線で「鏡山弘法前」下車。
→ 岐阜バス
南側の門から入ると、左にひときわ大きなお堂がある。これが大師堂で、弘法大師をまつる。その先の比較的小さなお堂が本堂で、国宝安置殿ともよばれる。本尊の千手観音像をはじめ、平安末期の毘沙門天像、鎌倉後期の韋駄天像はこのお堂に安置されている。
お堂は空海の命日である毎月21日、早朝から夕方まで開かれる。この日は多くの参拝客が訪れ、屋台も出て賑わう。
なお、21日以外でも拝観は可能(事前に申し込む方がよい)。
拝観料
志納
お寺のいわれ
別名を鏡島弘法あるいは梅寺という。行基によって千手観音をまつる草庵がつくられ、のちに弘法大師・空海がこれを寺院としたと伝える。鏡島や梅寺の名前も空海が起こした奇瑞に由来するという。
現在も弘法大師信仰が厚い寺だが、宗派は戦国時代に再興された折に臨済宗に転じた。
拝観の環境
本堂の壇上中央に本尊の千手観音像が安置される。この像と向って右側の韋駄天像はそれぞれ厨子内に安置されている。この厨子は前面にガラスが入っていて、中の仏さまを拝することができる。
やや高い位置に置かれるが、近くからよく拝観できる。
お寺の方の話だと、4月の開帳日にはこのガラス入りの扉も開かれるとのこと。
本尊像の印象
千手観音像は像高約110センチの立像。一木造。平安時代後期の作と思われる。
やや面長で精悍な顔つき、口はへの字に閉じて、なかなかいかめしい表情の像である。
体は細く、ほぼ直立する。下半身は長く、裳は裾で控えめに開く。衣の襞(ひだ)の彫りは浅い。
一方、お腹はぷっくりと豊かで、前で合掌する手は二の腕まで体幹部と共木でつくられるなど、古様なところも見える。
脇手の多くは残念ながら後補にかわっている。
韋駄天像と毘沙門天像
韋駄天像は像高約80センチの立像。目、鼻、口が顔の中央に寄り、人形のような整い方をした美しい像である。兜は別につくって着脱できるようになっている。衣は自在に波打ち、下半身右足を横に開いた姿はよく安定している。
本尊に向って左側にたつ毘沙門天像は、像高約160センチと実際にはそれほど大きな像ではないが、大きく見える像である。髪は低く結い、顔の怒りの表情や体勢は誇張を避けて控えめである。一見ややもの足りなく思うが、よく見ていると安定感があってすぐれた像であると感じる。腕や腰は太く、たくましい。
さらに知りたい時は…
『岐阜県の仏像』、岐阜県博物館、1990年
『岐阜県史 通史編・中世』、岐阜県、1969年