大聖寺の不動明王像

清涼殿に安置されていた像と伝えられる

住所
身延町八日市場539


訪問日 
2024年9月28日

 


この仏像の姿は(外部リンク)
大聖寺ホームページ



拝観までの道
大聖寺(だいしょうじ)は山梨県南部の国道52号(身延道)沿い、西側にある。
このあたりは南北に富士川と身延道が通り、これに沿うようにしてJR身延線が走っているが、大聖寺のあるあたり(旧中富町)は地形の関係なのか鉄道とはかなり離れ、駅から徒歩で行くことは難しい。
お寺の前に身延町営バス身延鰍沢線、古関循環線のバス停「大聖寺前」がある。しかし運行は朝晩中心で、日中の時間としては午前中の古関循環線1便があるのみである(甲斐岩間駅から乗車できる。ただし日祝は運休)。
お寺から南へ徒歩25分くらいのところにある飯豊病院の前に早川町のコミュニティバス(はやかわ乗合バス)が停留所を設けているので、このバス(身延線の身延駅を起点とし、下部温泉駅を通る)を使うのが良いかもしれない。
拝観は事前連絡必要。


拝観料
志納


お寺や仏像のいわれなど
真言宗寺院。
寺伝によれば開基は源義光(源義家の弟の新羅三郎義光)という。本尊の不動明王像はもと清涼殿に安置されていたが、甲斐の武将加賀美遠光が宮中守護の褒美として賜り、この地にもたらしたという。のち、武田信玄も大いに尊崇したとされる。
なお、本寺にまつわるこの3人の武将の肖像彫刻が、本堂向かって右奥に安置されている。


拝観の環境
不動明王像は本堂(江戸時代末ごろの再建)の中央の厨子中に安置される。

像の斜め上からライトを当ててくださっているので、とてもよく見える。
近くよりよく拝観させていただけた。

 


仏像の印象
不動明王像は、像高約85センチの坐像。割矧造で、樹種はヒノキという。平安時代後期の作。
総髪、両眼を見開き、上の歯で下唇を噛む、いわゆる大師様の不動明王像である。
不動明王であるからもちろん怒りの表情をしているが、全体に上品であり、バランスよく、姿勢も良い。脚部をくるむ衣のひだが大変優美で、定朝様が見て取れる。この整い方であれば、宮中よりもたらされたという伝えもなるほどという気がする。

眉は力強くくっきりと作られ、両目は近づき気味にし、目の玉は飛び出すように刻み出されている。小鼻から口もとにかけて控えめに入れられた線、またこめかみの微妙な凹凸が効果を出している。
正面からは怒りだけでなく憂いといった表情がうかがえるが、斜めから見るとまた別の印象があり、力強さに圧倒される。
首はやや長めかと思う。
上半身は高く、腕はそれほど太くなく柔らかみを感じさせる。上品な臂釧を刻み出している。
よく見えないが、腰布をつけているようだ。

脚部は高くないが、左右によく張って、安定感を出している。右足先を見せてゆったりと足を組む様子や、衣に包まれた脹脛のわずかな凹凸、足首のあたりの衣の処理なども素晴らしい。


その他
お寺のすぐ手前に身延町歴史民俗資料館がある。もとは旧中富町の資料館であり、この地区の歴史、民族資料が集められている。人が常駐していないが、大聖寺のご住職の手が空いていれば開けていただける。
大聖寺の本尊が江戸に出開帳を行なった際の文書など、このお寺関係の資料も展示されている。
入館は200円。


さらに知りたい時は…
『祈りのかたち 甲斐の信仰』(展覧会図録)、山梨県立博物館、2006年
『山梨県史 文化財編』、 山梨県、1999年
『中富町誌』、中富町誌編纂委員会、1971年


仏像探訪記/山梨県