正護寺の薬師如来像
迫力ある衣の線の魅力
住所
山口市陶郷上3907
訪問日
2009年3月29日
拝観までの道
正護寺は山口市の南部、新山口駅とその東隣の四辻駅の間の陶(すえ)というところにある。
防府駅前(北口)・新山口駅間の防長バスで「陶小学校前」下車、徒歩15分から20分くらい。ただしバスの本数は少ない。
四辻駅から歩くと40分から45分くらいかかる。新山口駅の南口にはタクシーが常駐している。
拝観には事前予約が必要。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれ
陶という地名は、古代に製陶が行われた先進地域であったことを示す。近くにはやはり古代に銭の鋳造が行われた遺跡も残る。
中世になると、陶氏という一族がここを根拠地とした。陶氏は大内氏の一族右田氏から分かれた氏族で、大内氏が中国一の大大名へと成長してゆくのをよく助けた。正護寺はその菩提寺として南北朝時代に建てられ、本尊の釈迦三尊像は創建以来の仏像と伝える。しかし陶晴賢のとき、主君大内義隆を下克上で倒したものの毛利氏に敗れ、中国の覇者は毛利氏へと移った。これによって正護寺は一時廃寺とされたが、その後復興を許されたという。
この寺には平安時代の薬師如来像が伝わる。この像は近くの廃寺となった寺院から移されて来たもので、本堂向って右手の脇堂に安置されている。
拝観の環境
ガラスごしだが、ご住職がガラス戸をひらいて拝観させてくださった。明るい場所で、またすぐ近くに寄ることができるので、たいへんよく拝観できる。
仏像の印象
像高は80センチ余の坐像で、霊威ある力強い像である。樹種はカヤ。
地髪と肉髻の境がくっきりと分かれず、衣の襞(ひだ)が力強く彫られていて、お腹には渦巻きの文も見える。お腹は大きく前に出ていなど、平安前期彫刻の特色をよくあらわす。螺髪は全部落ちている。耳が異様なまでに大きい。顔はやや小さめである。
膝はしっかりと張って、安定感があるが、衣の線は鮮明で、修復がなされているのかもしれない。肩のあたりの衣の反転や襞の繰り返しは、その後の平安後期彫刻ではすっきりしたものになるが、そうなる以前の生命力を感じて、とても魅力的である。
さらに知りたい時は…
『続 古佛』、井上正、法蔵館、2012年
『周防国分寺展』(展覧会図録)、山口県立美術館、2004年
「山口県の仏像」(『山口県文化財』25)、山口県文化財愛護教会、1994年