大林寺の十一面観音像
平安時代末期の在銘彫刻

住所
山口市朝倉町3-14
訪問日
2008年12月21日
拝観までの道
大林寺は、山口の市街地の北のはずれ、兄弟(おとどい)山という低い山の山腹にある。
山口駅から西北西の方向、直線距離にして約2キロ半、隣の湯田温泉駅からは北北東の方角、直線距離にして約2キロのところである。
山口駅には駅構内および駅前の個人商店のレンタサイクルサービスがあり、これを使うと便利。
それ以外の行き方としては、湯田温泉駅からタクシーか徒歩。または、山口駅からコミュニティバス(吉敷・湯田ルート)で「東朝倉」下車。
道はおおむね平坦だが、最後は上り坂となる。立派な鳥居が見えるが、それは隣にある朝倉八幡宮のもの(幕末に京を逃れた三条実美ら公家が参拝した神社だそうだ)。
* 大内文化まちづくり・レンタサイクル 山口市コミュニティバス
十一面観音像は本堂隣のお堂の厨子中に安置されている。
拝観には事前予約が必要。
*2017年に連絡をとられた方からのお話によると、秘仏ということで、普段の拝観には応じていただけなかたとのことです。
拝観料
志納
仏像のいわれ
十一面観音像は、もともとお寺の北方の岩戸山というところに安置されていたが、そこが荒廃したため移されてきた(寺ごと?)という。まげや頭上面は失われ、痕跡からかろうじて十一面観音像であったことがわかる。このお堂の厨子を安住の地とされるまで、厳しい歴史をくぐっていらしたことがうかがわれる。
像内に簡潔な銘文があり、平安末期の1178年に仏師僧禅忍十輪房が極楽往生を願って造立したことがわかる。十輪房については他に知られるところはない。地方で活躍した仏師であろうか。他に願主の記載がないことから、この十輪房が仏師であり、同時に願主であると考えられる。
拝観の環境
近くから拝観できる。お堂の中には照明もあるが、厨子内に安置されていて、顔は陰になる。お寺の方がご親切にライトを貸して下さったが、できれば持って行くとよい。
仏像の印象
像高は約1メートル、カヤの割矧(わりは)ぎ造である。もともと彩色をほどこさない素地の像と思われる。
事前に写真を見ていたが、顔はやんちゃな子どものようで、衣の彫りも素っ気なく、また全体にずんぐりした像であるような印象だった。
ところが、実際に拝観させていただくと写真とはまったく違って見え、驚いた。
引き締まった体躯で、すらりとしている。顔は神々しい。ただし、安置の位置の関係で顔は下から見上げる角度となり、そのために印象がかなり違ってきているのかもしれない。
衣の襞(ひだ)は全般的には単純であるが、条帛や天衣には深く刻まれたところがあり、また裙の折り返しの端の部分には細かな文様が刻まれていて、なかなかメリハリがきいている。腕はすらりとは伸びず、全体の姿勢としては直立に近い。地方的な造像であることは確かだが、神経が行き届いた造形である。
その他
堂内にはこの像のほか一木造の破損仏が1躰安置されている。
さらに知りたい時は…
『日本彫刻史基礎資料集成 平安時代 造像銘記篇』4、中央公論美術出版、1968年
「平安在銘彫刻資料」9(『MUSEUM』No.172)、水野敬三郎、1965年7月
