安居寺の聖観音像

  毎年10月18日に開扉

住所

南砺市安居4941

 

 

訪問日 

2009年10月18日 

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

とやま学遊ネット・木造聖観音立像

 

 

 

拝観までの道

安居寺(あんごじ)は、富山県南西部の南砺(なんと)市にある古刹である。

最寄り駅は城端線の福野駅で、そこから徒歩1時間弱。福野駅前にはタクシーが常駐している。

南砺市営バスの「安居寺前」バス停(安居循環線、福光・福野循環線)が近いが、土・日・祝日は運休。

 

 → 南砺市営バス「なんバス」時刻表

 

本尊・聖観音像は33年に一度の秘仏とされるが、20世紀前半まではほとんど開かれることなく、お前立ちを開帳してきたらしい。

現在は1年に1度、10月18日に収蔵庫の「風入れ」として公開している。

 

 

拝観料

特に拝観料等の設定はなかった。

 

 

お寺や仏像のいわれ

本尊は、母・摩耶(まや)夫人のために釈迦自らが彫り、インドから渡来した善無畏(ぜんむい)三蔵によってもたらされたという壮大な寺伝を持つ。古代、聖武天皇の勅願所として行基が大伽藍を建立した、また最盛期には24の坊があった等伝えるが、不詳である。

実際に古代や中世の遺品が周囲から出土していること、関連寺院と思われる興法寺、善法寺などの地名が近くに存在することから、古くより栄えた寺院であったことは確かであるようだ。

南北朝と戦国期の兵火で荒廃するも、江戸時代には加賀藩の保護を受けて再び栄えた。

 

 

拝観の環境

仁王門を入ると正面が観音堂、その裏に収蔵庫がある。扉口から金網越しの拝観。

中はライトで明るく照らされているが、仏像までの距離がややあり、肉眼では細部まではよく分からない。オペラグラスのようなものがあるとよい。

 

 

仏像の印象

収蔵庫の中は、中央に観音堂本尊の聖観音像、向って右にそのお前立ちの観音像、向って左には石造の地蔵菩薩像が安置されている。

 

本尊の聖観音像は像高約90センチの立像、カヤの一木造で、内ぐりもない古様なつくり。頭は素朴な冠をつけ、低い髻を結っている。顔は写真で見るとまじめで特徴に欠ける感じだが、実際に見るとなかなか優しい表情で、写真の印象とは異なっている。切れ長の目や小さな口元も愛らしい。

裙の上端に見えているのは紐の結び目であろうか、可愛らしい形をしている。耳にはイヤリング状のものをつけていて珍しいが、正面からは見えない。

少し遊ばせた右足、開き気味の右腕に加えて、ダイナミックに表現された衣が静かな中に躍動感を生んでいる。衣は襞(ひだ)が深く刻まれる。たっぷりとした裾は左右から絞られ、その下方で後ろにたなびいているようである。前方からの風を受けているさまを表しているのだろうか。裙の折り返しの部分も風に翻っているように見えて、大変魅力的な造形である。

残念なことに、右手先と左の臂から先、天衣の一部が後補。それ以外はかなりよく当初のままをとどめているので、全般的に保存はよいが、後補の腕はバランスを損ねる。

 

向って右の前立ちの観音像は檀像風の素木の像である。本尊より一回り小さい(像高約60センチ)。顔や上半身はおとなしいが、下半身は大きく、また襞や腰から下がる紐の結び目など、壮快なほど大胆なつくりである。

地蔵菩薩は像高約40センチほどの半跏像で、石にくっきりと刻まれている。右手にもつ錫杖の頭の部分などなかなか彫りが細かい。このタイプの石造は県内で類例があるそうで、この像がそのモデルとなったと考えられているらしい。

 

 

その他

観音堂の右手に本堂がたつ。仁王門と観音堂は江戸期だが、本堂は近年の建物である。自由に拝観できる。

本堂の内陣左奥には「見返り阿弥陀如来像」が安置されている。像高約80センチ。「見返り」といっても有名な京都・永観堂の像ほどには見返っていないが、珍しい作例である。

 

 

さらに知りたい時は…

『安居寺の文化財』(展覧会図録)、 高岡市立博物館、1995年

 

 

仏像探訪記/富山県