高蔵寺の阿弥陀如来像
奥州藤原氏ゆかりの丈六仏
住所
角田市高倉字寺前49
訪問日
2008年7月21日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
東北本線の福島駅と槻木駅を結ぶ阿武隈急行線の角田駅から西北西、直線距離で5キロくらいのところに高蔵寺はある。かつてはバス路線があったらしいが廃止され、交通手段としてはレンタサイクルかタクシーを使うしかない。
レンタサイクルは、角田駅に付設されているコミュニティプラザ(オークプラザ)で貸し出している。5時間まで100円と安く、15台用意されている。
駅の北側で線路を跨いでいる国道113号線ではじめ北東、途中からほぼ西へと進んで行く。近くまで来ると案内板があり、分かりやすい。地図は、コミュニティプラザで観光マップをもらえる。道はアップダウンが少なく、走りやすい。こぐスピードにもよるが、駅から35分くらいである。
拝観には事前連絡が必要。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれ
高蔵寺の阿弥陀堂は平安末期、1177年建立と伝えられる。宮城県で最古の建築であり、院政期の阿弥陀堂として大変貴重な遺例である。約9メートル四方の落ち着いた建物で、周囲の緑によくとけ込んでいる。
本尊は丈六の阿弥陀如来坐像で、やはり平安時代末期の作。平泉の藤原秀衡とその妻が建立したと伝える。
拝観の環境
多くの寺院では、仏像は古いお堂の中ではなく、新しい収蔵庫に移されているが、ここ高蔵寺では仏像は昔ながらに本堂に安置されている。
災害から文化財を守るということでは収蔵庫に置くのがよいのだろうが、仏像を拝観する場所としてはもともと仏像が安置されていたお堂の中にしくはない。今回、お堂の中央、光背が天井につかえんばかりの迫力の阿弥陀像を拝観することができて、本来の場所で仏さまにお会いできることの喜びを改めて強く感じた。
照明もつけてくださり、よく拝観できる。また横からも拝観できる。
仏像の印象
阿弥陀堂本尊の阿弥陀如来像は、都ぶりの定朝様式の仏像で、藤原秀衡ゆかりの像という伝えもさもやあらんという感じである。切れ長の目、頬の自然な丸み、流麗な衣紋線の流れなど、魅力的である。横から見ると、胸は比較的薄い。
張りのある顔つきなど全体的に清新な若々しい雰囲気を持つのは、鎌倉時代に近いという時代の雰囲気からであろうか。
膝は厚く、また大きく張っていて、やや無骨であり、地方的な造像の要素も感じる。
光背、台座も補修箇所はあるが、基本的に当初のものと思われる。
その他
本尊に向って右奥に、阿弥陀如来坐像が安置されている。大きく破損し、痛々しい。本尊より一回り小さく感じるが、光背・台座が失われてしまっているためで、実際は本尊とほぼ同じ丈六の仏である。やはり定朝様式の仏像で、頭躰部は4材をあわせていることや内ぐりが大きくとられ、木材の厚みはかなり薄いことなど寄木造の特徴がわかる。
本尊よりも頭が大きく、下ぶくれの顔つきで、地方的な造像という要素が強いようにも思われる。
近代のお堂の修理の際、天井裏から発見されたのだそうで、この仏像がお堂と同時につくられ、何らかの事情で早く破損して現在の仏像がつくられたのか、または別のお堂の本尊であったものか、不明である。
堂内にはこのほかにも平安期の破損仏が何躰か安置されている。
さらに知りたい時は…
「ほっとけない仏たち102 高蔵寺の阿弥陀如来」(『目の眼』573)、青木淳、2024年6月
『仏像集成』1、久野健編、学生社、1989年
『宮城県史』13、宮城県史刊行会、1980年