置恩寺の十一面観音像

  平安前期の美しい観音さま

住所

葛城市寺口706

 

 

訪問日 

2013年1月26日

 

 

 

拝観までの道

置恩寺(ちおんじ)は、近鉄新庄駅(近鉄御所線)下車、西へ徒歩35〜40分。駅前にはタクシーが常駐する。

バス利用の場合は、葛城市の環状線バス(れんかちゃん号)で「屋敷山公園」下車、西へ徒歩20分。

お寺は葛城山系の山裾にあり、そこに至るまでの道は基本的に上り坂であるが、ことに県道254号を越えてからの最後の数分間は、道は細く、急坂となる。

 

以前は事前連絡で拝観させていただけたが、現在は毎月17日(ただし6月は不可)および4月第4日曜日に開扉し、拝観できるとのこと(10〜14時)。問い合わせ先は葛城市の商工観光プロモーション課。

 

葛城市商工観光プロモーション課・知恩寺

 

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺や仏像のいわれなど

真言宗の寺院。

置始氏(おきそめし)の氏寺であったと伝える。置始氏は葛城山麓の有力豪族のひとつで、染色技術にたけていたといい、古代最大の内乱といわれる壬申の乱や遣唐使として活躍した記録がある。

時代は下って戦国時代にこの地域で活動した布施氏という地方武士が、置始氏の後裔を名乗っている。置恩寺境内には「置始行國」の名前が刻まれた16世紀初頭の石灯籠が残っているが、この行國は布施氏とみられる。

 

境内といっても、置恩寺は小さな寺域に本堂と収蔵庫のみが残る小寺院で、現在は無住となり、地域の方が管理をされている。一時はおおいに栄えたとも伝えられるが、置始氏、布施氏の勢力が衰えると、置恩寺も衰退していったのであろう。

 

 

拝観の環境

境内に西面してつくられている収蔵庫に、このお寺に伝わる平安時代前期の十一面観音像が安置されている。

庫内はやや暗いが、近くよりよく拝観させていただける。

 

 

仏像の印象

像高約170センチの立像で、樹種はカヤという。内ぐりもない、古様なつくり。

たいそう美しい観音像で、顔は小さく、下半身を長くして、プロポーションがよい。腰やももは量感豊かだが、立ち姿はバランスよく、安定感がある。目鼻立ちは小ぶりで、品がよくまとめている。

髪、胸、腰など、部分部分は誇張を避けて自然な感じだが、全体を見ると、胴はしっかりとくびれ、腰をひねり、右足をあそばせて、メリハリのある姿である。

下肢では翻波式の衣文がみられる。大波に小波を沿わせるようにして刻む襞や、裙の打ち合わせの曲線は、おしゃれな感じさえする。

 

 

さらに知りたい時は…

『南都大安寺と観音さま展』(展覧会図録)、パラミタミュージアム、2012年

 

 

仏像探訪記/奈良県