白米寺収蔵庫の地蔵菩薩像、阿弥陀如来像

廃寺の仏像を伝える

住所

川西町下永385(八幡神社境内)

 

 

訪問日 

2017年5月27

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

川西町の文化財

 

 

 

拝観までの道

近鉄橿原線の結崎(ゆうざき)駅から北へ約10分。下永八幡神社境内。

拝観は事前連絡必要。問い合わせ先は川西町教育委員会。

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺や仏像のいわれなど

白米寺(はくまいじ)はもとこの神社の北東、大和川を渡った先にあった古寺で、八幡社の神宮寺であったという。白米(くめ)密寺ともいった。

近世以前に廃寺となり、その遺品は散逸しているが、仏像は現在の収蔵庫の場所に阿弥陀堂、やや離れた場所に地蔵堂がつくられて、まつられていた。1960年代に、保存のために収蔵庫へと建て替えられた。

 

 

拝観の環境

中央に平安時代後期作の如来坐像、向かって右に平安時代前・中期の地蔵菩薩立像、向かって左に鎌倉時代の不動明王像、さらに左側の壁面には破損した像が数躰ならんでいる。

庫内で近くよりよく拝観させていただけた。

 

 

仏像の印象

地蔵菩薩像は像高約160センチの立像。クスノキの一木造という。平安時代の中期ごろの作と思われる。

小さい頭部と堂々たる体躯。魅力的な像である。

顔つきはおだやかで優しさがかんじられる。目鼻を中央に集める。眉や目が若干非対称で、また鼻と口の中心線がずれていることによってであろうか、動を感じさせる。

体は量感があり、どっしりとしているが、よくよく見ると腹、もも、体の厚みなど、それほど太さがあるわけではない。しかし下半身の衣のひだが密に、また深く刻まれていて、それが像に力強さを与えているのだと思う。

ほぼ直立するが、右足を少し遊ばせており、体の動きが衣へと伝わり、そのゆらぎが豊かなひだの様子をつくり出し、そのさまがみごとに造形化されている。

うしろにまわって見ると、背中のラインもとても美しい。

 

中央の阿弥陀如来坐像は像高約140センチ。堂々たる半丈六像である。

平安後期の様式の像ではあるが、目の見開きは大きく、膝の高さも十分で体も厚みをしっかりととる。

肉髻は高く、顔は大きめで、やや斜め下を向く。

蓮肉とその下の華盤が当初のものであるのも貴重である。

 

 

その他

堂内の左側に安置される不動明王像は、像高約50センチの比較的小さな像である。片目をすがめ、髪は巻き毛、また左右の牙を上下に出す、いわゆる十九観の不動である。

すさまじい忿怒の形相であり、下半身は若干右にひねるが、その表現は誇張をさけ、整って美しい。鎌倉時代の作と考えられる。

 

 

さらに知りたい時は

『川西町史 本文編』、川西町史編集委員会、2004

 

 

 

仏像探訪記/奈良県