栄山寺の薬師如来像、十二神将像
春と秋、約1ヶ月ずつ公開
住所
五條市小島町503
訪問日
2014年5月5日
拝観までの道
栄山寺(榮山寺、えいざんじ)はJR和歌山線の五条駅南口から徒歩25~30分。
駅の南、「須恵」という小さな交差点から東へ15分くらい行くと、「今井町」の交差点に出る。国道25号をわたって、県道39号に入り、東へ10~15分くらい行くと、左側にある。南に吉野川をのぞむ高台にあるお寺である。
他の行き方としては、駅に常駐するタクシー、または南口すぐのところにある観光案内所ではレンタサイクルを行っている。
栄山寺では例年春秋に公開期間を設けているようで、春は4月下旬から5月下旬まで、秋は10月から11月にかけ、それぞれ約1ヶ月間。この期間にうかがうと、八角円堂の内部と本堂内部が拝観できる(2014年の春は4月25日から5月25日までだった)。
八角円堂内には、ごくわずかだが奈良時代に創建された当初の壁画が残っている。内部の柱のうちの南東側の1本の中央部分は比較的見つけやすい。
拝観料
400円
お寺や仏像のいわれなど
栄山寺は真言宗寺院。
その前身は藤原不比等の子で藤原南家の祖、武智麻呂が創建した前山(さきやま)寺といわれる。
境内に建つ八角円堂は藤原武智麻呂の菩提のためにその子仲麻呂が建立したもので、奈良時代の円堂として法隆寺夢殿と並び称される。安定感ある夢殿とでは印象はずいぶんと異なり、底面積は小さい割に高さをしっかりととって、簡素な中に伸びやかで優雅さがある。
拝観の環境
春秋の公開期間、本堂では本尊の薬師如来像と眷属の十二神将像を拝観できる。
堂内、近くよりよく拝観できる。
仏像の印象
本尊と十二神将は、いずれも室町時代の作である。
本尊の薬師如来像は、金色があざやかな110センチほどの坐像。細かく材を用いた寄木造。
肉髻を低くつくり、抑揚を抑えた顔のつくりは独特の雰囲気である。
両肩にかかる衣は装飾的に折り畳まれ、腕には余った衣の先を巻くようにしてかけている。
脚部は大きく、安定感を出す。
十二神将像は60~70センチほどの立像で、寄木造。
いずれも顔つきをしっかりとつくり、姿勢や服制をかえ、腰回りはどっしりとして重量感を出す。体勢はそれほど大きくはないが、存在感あるすぐれた群像である。
頭頂には十二支を標識としてつける。
多くの忿怒形の天部像はよく袖をひるがえしたり、先を縛ったりしているが、本像ではそれがない。腕に余った衣を巻いているものがあり、面白い。
すべてではないが、台座裏に1454年、1455年の銘があり、室町時代の基準作例として貴重である。
その他
武智麻呂の墓所が裏山、徒歩20分くらいのところにあるそうだ。
さらに知りたい時は…
『五條市史 新修』、五條市史編集委員会、1987年