慶田寺の十一面観音像
古様な仏像の魅力
住所
桜井市芝753
訪問日
2011年9月18日
拝観までの道
慶田寺はJR桜井線の三輪駅、巻向駅から徒歩約20分。
付近には有名な箸墓古墳や大神神社もあり、発掘調査の成果を展示する桜井市立埋蔵文化財センターも近い。
最寄りのバス停は、桜井駅北口と天理駅を結ぶ奈良交通バスの「芝」で、下車後西へすぐ。ただし便数はあまり多くない。
筆者は、桜井駅北口の駐輪場にあるレンタサイクルを使った。慶田寺までは15分くらいだった。
*このレンタサイクル事業は現在は終了した模様(2022年現在)。
拝観には事前連絡必要。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれなど
慶田寺は15世紀の創建と伝え、織田信長の弟長益(有楽斎)家の菩提寺としても知られる。曹洞宗。
本堂の裏手に続く納骨堂に阿弥陀如来像、十一面観音像が安置されているが、これらは近代初期の廃仏の際に廃寺となった近隣の寺より移されてきた像だそうだ。
阿弥陀如来像は半丈六の坐像で、玉眼を入れる。
一方、十一面観音像は古代の像。像高は約2メートル、樹種はケヤキ。頂上の仏面から足底まで、本来は両腕までも共木でつくられ、内ぐりもない一木造である。
拝観の環境
お堂の中は外の光が入って、よく拝観できる。
仏像の印象
十一面観音像は、1972年に修復を受けている。それ以前は粗悪な後補の彩色のほか、胸に板をはぎ付け、肩にも材をはさんで、量感豊かに見せるような改変がされていた。
修復で後補部分を除いたので、素地をあらわしている。
細く長い体は垂直への方向性が強い。とても古様な仏像という印象で、強く惹き付けられる像である。
頭上面は仏面以外は亡失。低いが大きく結われた髪、天冠台、耳は、傷んではいるが、精緻で美しい彫りである。
顔は、大きな鼻、細いがくっきりと彫られた目、やはりくっきりと力強い口の形で、はっきりとした印象である。
胸の輪郭が不自然であるのは、後世の稚拙な改変のためであろう。
下肢の衣は、襞(ひだ)をつくっているというよりは、重なりあっているようなつくり方で、石彫の仏像を思わせる。両膝間にくっきりとした渦巻きの文がある。
さらに知りたい時は…
『観音のいます地 三輪と初瀬』 (展覧会図録)、なら歴史芸術文化村、2022年
『続 古佛』、井上正、法蔵館、2012年
『飛鳥の仏像』、奈良国立文化財研究所飛鳥資料館、同朋舎出版、1983年
『桜井市史』上、桜井市史編纂委員会、1979年