南明寺の薬師如来像
山あいの古寺で出会える仏さま
住所
奈良市阪原町1005
訪問日
2009年12月6日
拝観までの道
南明寺(なんみょうじ)は奈良市といっても東のはずれ、柳生の里に近いひなびた地域にある。
JR奈良駅、近鉄奈良駅から柳生方面行きの奈良交通バスで約45分。「阪原」で下車すると、東へ数分のところである。ただしバスの本数は日中5本程度と少ない。
→ 奈良交通バス
本堂があるだけの小さなお寺で、普段は無住。
拝観は事前連絡必要。
拝観料
300円
お寺のいわれ
このお寺の成り立ちはよくわからない。かつて阪原千坊といわれた寺院群が古代につくられ、その流れを汲むものである等伝えられる。
拝観の環境
本堂は鎌倉時代のもの。そこに平安時代の3躰の如来像である薬師像、阿弥陀像、釈迦像と四天王像とが安置されている。大きくなく、重々しくなく、ほんとうにいいお堂で、外から入ってくる光や風、鳥の声の中で仏像を拝観できるのは、とてもうれしい。
内陣と外陣が格子で仕切られ、拝観は外陣から。やや暗いが、かなり近い位置からよく拝観することができる。
仏像の印象
本尊は薬師如来像で、像高約85センチの坐像。
素朴でかわいらしい像という印象の像である。ほぼ等身大だが、小さく感じる。
肉髻と地髪部がくっきりとは分かれていず、一見ニット帽をかぶったような頭である。体部は、なで肩で腕の左右への張り出しも少ない。頭も体も単純な形、カプセルのような形が2つ上下に重なっているようで、さらにその後にはその形を大きく引き伸ばしたような板の光背(当初のもの)がついている。そんなところが素朴、可愛らしいといった印象を与えるのだろう。
腕が左右に張り出さないのは、腕まで本体と共木の一木造でつくられているからである。一本の木からできる限り彫り出したいという意識がある。また、内ぐりもない、古様なつくりの像である。材はカツラ。
しかしじっくりと拝観させていただいていると、なかなか整ったお顔つきであることがわかる。ほおには張りがあり、生気がある。目は細く小さめ。
上半身は高い。衣の線は浅く、胸、腹なども誇張がない。膝は左右にしっかりと張って、安定感がある。
その他の仏像
薬師如来像のまわりに4躰の天部像が安置される。四天王像と称されるが、十二神将のうち4躰のみが伝わったのかもしれない。70センチほどの小さな像で、それぞれ思い思いの姿勢、表情をしてかわいらしい。
→ 奈良市・指定文化財(木造四天王像)
そのさらに左右には半丈六の阿弥陀如来坐像と釈迦如来坐像が安置されている。平安後期・末期の像で、地方的な造像の要素がある。
その他
この地区は石仏が多いことでも知られる。南明寺から北に15分ほど行った長尾神社のそばには足痛地蔵や阿弥陀磨崖仏、柳生街道を進んで阪原峠を越え、柳生の集落の入口にはほうそう地蔵や中村六地蔵がある。
さらに知りたい時は…
『月刊大和路ならら』148、2011年1月
『仏像めぐりの旅2 奈良 奈良公園・西の京』、毎日新聞社、1992年
『奈良県文化財図録』Ⅶ、奈良県教育委員会、1974年