三条会館の石造仏
石に刻まれた釈迦・涅槃の姿
住所
奈良市三条町
訪問日
2010年1月16日
拝観までの道
JR奈良駅の東、徒歩3分のところに三条(三條)会館がある。
駅前の信号を渡り、三条郵便局の北側の道を東へと入っていくと、まもなく右側に見えてくる建物である(角振町の三条会館ビルとは別)。
近鉄奈良駅からだと西南に10分くらい。
ここに不動堂と称する小さなお堂というか集会室があり、奈良市指定文化財の石造仏2点が安置されている。
所蔵は三条農家組合。拝観の問い合わせは奈良市教育委員会へ。
*奈良市ホームページによれば、現在一般には非公開とのこと。 *奈良市・文化財
拝観料
志納
仏像のいわれなど
三条会館不動堂には2つの石造仏が安置されている。涅槃石と弥勒像である。
もと、この奈良・三条町の弥勒堂にあったが、いつのころかお堂は失われ、戦前には菓子屋の庭に、さらに戦後になるとそこに食堂がたてられて、その厨房内にあったそうだ。その食堂が1983年に道路拡張で取り壊されて、像は現在の不動堂に移された。
今では、長年の汚れも落とされてきれいな石の色がよみがえり、ガラスケースの中におさまっている。
拝観の環境
照明もあり、ガラス越しながら近くからよく拝観できる。
仏像の印象
涅槃石は、よくお寺で掛かっている釈迦涅槃図をそのまま浮き彫りにした作品で、鎌倉時代後・末期の作という。高さ150センチ余りで、花崗岩製である。
横たわる釈迦の像は、顔だちこそはっきりしないが、体の線はくっきりとよくわかる。
その右上には、母である摩耶夫人が雲に乗って急ぎやってくる。釈迦の左側には高くそびえる沙羅双樹の木が描かれ、回りには合掌する人、手を顔に持っていって涙を拭う人、すがるようにして釈迦の足下の方に座る人などが描かれる。その下にはかなり大勢の人が描かれているようだが、摩滅が進み、はっきりしない。さらに下方には神々、鳥、獣などが彫り出されている。
釈迦やとりまく人々の表情まではわからなくなっているのが残念だが、細部がくっきりとしていないことが、逆に全体の画面の聖なる高まりをつくりだしているようにも思えて、いつまでも見ていたいと感じる。
弥勒石仏は約180センチの大きな像である。花崗岩製。
江戸時代に落雷によって損傷したという。本来は上に笠石が載っていたらしいが、この時の衝撃と火災で失われ、また顔をはじめかなり傷みが進んで、表情はわからない。
手は左手は蓮華をもち、その蓮華上には宝塔が載る。右手は下に下げた与願印である。下肢は繰り返す衣の襞(ひだ)が控えめに描かれる。像の左右には蓮華を挿した大きな花瓶を浮き彫りにしている。
像の側面に銘文があり、鎌倉末期の1322年の年や作者名として石工末次の名前が刻まれている。
その他
弥勒石仏の作者・末次の作品としてはほかに京都府木津に鹿背山の不動石彫像(1334年)がある。
さらに知りたい時は…
『日本の石仏200選』、中淳志、東方出版、2001年
『奈良県史』7、奈良県史編纂委員会、1984年
『弥勒・涅槃石像』(パンフレット)、三条農民組合、1983年