尊延寺の五大明王像

3体が平安時代の作

住所
枚方市尊延寺6-11-1


訪問日
2024年1月18日
 

この仏像の姿は(外部リンク)
尊延寺ホームページ



拝観までの道
尊延寺は京阪バス「尊延寺」下車。
枚方市駅から津田駅(津田西町)を経由し、穂谷行きのバスと、近鉄新田辺駅から長尾駅を経由し、松井山手駅へ向かうバスが「尊延寺」バス停を通る。
拝観は事前連絡必要。


拝観料
300円


お寺や仏像のいわれなど
真言宗寺院。

寺伝によれば奈良時代創建という。

16世紀には本能寺の変後に徳川家康が伊賀を越えて本拠地三河へと戻る際に通った場所でもあったそうだ。


拝観の環境
本堂の壇上に本尊の五大明王像はじめ、諸仏がまつられる。

堂内でよく拝観させていただける。


仏像の印象
五大明王像は中央に不動明王像、向かって右に降三世明王像、その後ろに金剛夜叉明王像、向かって左に軍荼利明王像、その後ろに水牛に乗る大威徳明王像という通例の配置である。このうち、不動、降三世、軍荼利の各像は平安時代後期ごろの作。

後列の金剛夜叉明王像、大威徳明王像は江戸時代に補われたもので、やや華奢にも見える。

不動明王像、降三世明王像、軍荼利明王像はそれぞれ像高160センチ前後の立像。
ただし不動明王像は寄木造、降三世明王像と軍荼利明王像は一木造で、どうやら一具ではないらしい。不動明王像は12世紀に入っての作、二明王像はそれよりも早く、11世紀前半ころの作と考えられている。

不動明王像は、髪をオールバックにして、両目を見開く姿である。遠くを見ているような目は印象的である。眉、目、鼻、口が接近し、あごはとても大きくつくられており、力強いが同時に諧謔味が感じられ、魅力的な顔立ちと思う。お腹はそれほどまるまるとはせず、腰もあまり太くはしないが、ゆったりとつくられる。下半身の衣はひだを深くはしないが、的確で自然な感じである。

降三世明王は、シヴァ神夫妻を踏む姿。顔は小さめにつくる。前方に重心をかけ、二神を均等に踏みしめている様子はなかなか魅力的である。怒りの表情がこちらまでぐぐっと伝わってくるような印象がある。

軍荼利明王像は、手足に蛇を巻き、左足を高く上げ、8本の手がバランスよく広がって、今、この姿勢をとったその瞬間の姿といった印象がある。怒りの表情も誇張はせず、全体にバランスがとてもよい。前で交差する腕も自然である。脇手は、後補もあるが、当初のものも残していて、貴重である。


その他
このほか壇上には、中央の不動明王像を囲んで前に地蔵菩薩、後ろに大日如来像、左右に愛染明王像と十一面観音像が安置されている。
地蔵菩薩像は像高約90センチの立像。切れ長の目に小さくつくったあご、なで肩、ややずんぐりした体形で、個性のある魅力的な像と思う。


さらに知りたい時は…
「新指定の文化財」(『月刊文化財』633)、文化庁文化財部、2016年6月
『京街道』、大阪府教育委員会、1989年


仏像探訪記/大阪府