専念寺の十一面観音像、大日如来像
古代の大寺院三宝寺の遺仏と伝える
住所
大阪市東淀川区小松3-5-15
訪問日
2013年7月13日
この仏像の姿は(外部リンク)
大阪市指定文化財・木造十一面観音菩薩立像 木造大日如来坐像 木造阿弥陀如来坐像
拝観までの道
阪急京都線の上新庄駅北口下車、東に徒歩約10分。小松商店街を抜け、突き当たり。
拝観は事前連絡必要。
拝観料
拝観料等の設定は特になかった。
お寺や仏像のいわれなど
浄土宗のお寺。
創建は江戸時代初期。大阪市北区にある同名の専念寺の第3世が隠居寺として開いたのがそのはじまりという。
お寺のある東淀川区東部は、平安時代には味原牧または乳牛牧という荘園があり、牛乳を特産としていたらしい。また、三宝寺という大寺院があったとされる(江戸時代前期までに廃絶)。
専念寺には3躰の古仏、すなわち本尊の阿弥陀如来像、十一面観音像、大日如来坐像が伝来するが、このうちの後2者は三宝寺の旧仏であると伝える。
拝観の環境
十一面観音像と大日如来像は向って右手にある旧本堂に厨子に入って安置されている。十一面観音像は上からの垂れもののために顔が陰になるが、近くよりよく拝観させていただける。
仏像の印象
十一面観音像は、専念寺に伝わる古仏3像の中でもでおそらく一番古い像と思われる。平安中期ごろの作であろう。足下の台座の一部まで一木造でつくられている。
以前撮られた写真を見ると、顔の荒れが痛々しいが、近年の修理で面目を一新した。
丸顔で目ははれぼっくなっているように強調され、頬は豊かに張る。鼻は大きく、また鼻・口は微妙に正中線をはずしている。いかり肩で、体躯はいかにも一木造の存在感が横溢する。下肢の太い衣の線もすばらしい。
大日如来像は像高約1メートルの坐像。割矧(わりは)ぎ造、彫眼。
穏やかで落ち着いた像である。頭、上半身、脚部のバランスがよく、胴はくびれ、下半身の衣の流れも流麗である。智拳印を結ぶ手の構えも自然な動きの中に緊張感をもつ。 平安末期から鎌倉初期ごろの像と思われる。
なお、大日如来像の左右に男女の肖像彫刻(近世作)が置かれるが、江戸初期の豪商・豪農、屏風屋勘左衛門夫妻の像という。伝えによれば、大日如来像はもと三宝寺廃絶後、勘左衛門の像となっていたが、村人に恨まれ、キリシタンとの疑いをかけられて処刑されてしまった。その死後大日如来像が見つかって、キリシタンではなかったとわかった。村人が像を専念寺にまつると、豊作が続いたという。
その他(本尊の阿弥陀如来像について)
本尊の阿弥陀如来像は、近年建てられた新本堂の中央壇上に安置されて、こちらも拝観させていただける。
像高約70センチの坐像。割矧ぎ造、彫眼。来迎印を結ぶ。
丸顔の頭部はやや大きく、逆に脚部は小さめであるなど、定朝様を学びながらも、なお地方的な造像であるような印象である。肉髻もそれほど大きくない。
かつては後補の表面に覆われて像容を損ねていたが、近年の修理でそれを落とし、落ち着いた姿となった。
さらに知りたい時は…
『大阪の歴史と文化財』7、大阪市教育委員会、2001年
『大阪市内の仏像・仏画 専念寺の仏像について』(『大阪市文化財総合調査報告書』21)、大阪市教育委員会、2000年