鳥居観音の阿弥陀如来像
鎌倉時代の来迎阿弥陀像
住所
飯能市上名栗3198
訪問日
2011年3月13日
拝観までの道
西武鉄道の飯能駅またはJR八高線の東飯能駅から名郷方面行き国際興業バスに乗車し、45〜50分。「連慶橋」で下車。バスの本数は日中1時間に2本程度。
→ 国際興業バス
バス停の名前になっている連慶橋で名栗川(入間川上流)を渡ると、正面の山に立つ巨大な観音像が見えてくる。そのまま道沿いに5分ほど歩くと、鳥居観音の庫裏・本堂に着く。
拝観料
鳥居文庫200円
お寺のいわれなど
白雲山鳥居観音は、1985年に93歳で亡くなった平沼彌太郎(弥太郎)という人が開いたお寺である。
名称の「鳥居」とはこのあたりをさす地名。「観音」は亡き母の観音信仰をきっかけとしてつくられた寺院であることからきている。
道沿いにある庫裏・本堂から大観音像の立つ山中まで、実に広大な寺域を擁するお寺で、その中にいくつかの堂像がおかれて、巡ることができるようになっている。そのほぼすべてが、平沼弥太郎氏によってつくられたものである。平沼氏はこの地域出身の名士であり、林業家、銀行家、また県会や参議院議員もつとめたことがある。彫刻家でもあり、桐江(とうこう)と号した。
本堂正面には平沼氏作の豪華絢爛たる仏像彫刻が並ぶ(一部は関係する彫刻家の方の作品)。その中で、彩色像でない聖観音像と梵天・帝釈天像は、平沼氏が亡母のためにはじめて刻んだ像とのことである。
本堂の斜めうしろに、鳥居文庫という宝物館がある。様々な縁によってこのお寺に集まってきた宝物類、仏像・民俗資料・書、写真資料等が並んでいる。玉石混淆の感もあるが、味わいのある展示である。水曜日は休み。連絡を入れて行くのがよい。
拝観の環境
鳥居文庫中に安置されている仏像の中で、鎌倉時代の阿弥陀如来像(来歴不明)は、県指定文化財となっている。
ケースごしだが、すぐ前からよく拝観できる。横からの姿もわかる。
仏像の印象
この阿弥陀如来像は、像高約75センチとやや小さな立像。玉眼。
来迎印を結び、左足を半歩前に出す。蓮台は左右に分かれた踏割蓮華座の形(ただし後補)。足下にはほぞをつくらず、足の後方で2本の棒状のほぞによって立っている。
一般に立像では足の下にほぞをつくって台座にたてるが、そうしない像の場合、足の裏に「仏足石」で見られるような模様が描くなど、見えない部分までも仏の特徴を出来る限り正確に再現しようとしてつくられている場合がある。いわゆる「生身仏」である。この像もそうした考え方でつくられていると思われる。
肉髻は低く、正面の髪際はカーブする。
落ち着いた顔立ち。体は細身で、顔もやや細長い。胸や背中は自然な肉づきで、半歩足を踏み出した姿勢も破綻なくよくまとまっている。
衣は若干煩瑣で、鎌倉時代も後期になっての像と思われる。
その他1
かつてこのお寺には、平安時代中期ごろの一木造の阿弥陀如来立像(重要文化財)があった。もと大分県の天念寺本尊で、水害で損壊した本堂の再建資金として売却されたのだという。この仏像はその後大分県などが買い戻し、現在は「鬼会の里歴史資料館」(豊後高田市)というところで展示されている。
その他2
山中のお堂をめぐりながら大観音像までの道を行くのには、別に入山料(200円、車の場合は500円)が必要。映画のロケにも使われた、四季の彩り豊かなハイキングロードとなっている。冬期は休み。
大観音像(救世観音)は内部に入れるようになっていて、桐江氏の彫刻作品の拝観や展望台がある。ここは土日祝日に入場できるそうだ(拝観料200円)。
さらに知りたい時は…
『飯能の名宝』(展覧会図録)、飯能市立博物館、2019年
『名栗の仏像』、名栗村教育委員会、1994年
『鳥居観音と平沼彌太郎』、島田知明、株式会社プレス、1971年
『埼玉県指定文化財調査報告』第4集、埼玉県教育委員会、1965年