十輪寺の金剛力士像
素朴で力強い仁王さま
住所
小鹿野町小鹿野1823
訪問日
2008年11月23日
拝観までの道
十輪寺は小鹿野町(おがのまち)役場に近い町なかにあるお寺である。
交通は西武秩父駅または秩父鉄道の秩父駅から西武観光バス小鹿野車庫行きに乗って約40分、「小鹿野町」で下車するとすぐ。
短い参道を北に向うと、まもなく小さな山門が見えてくる。
県の指定文化財になっている仁王像(金剛力士像)はこの山門に安置され、自由に拝観できる。
拝観料
なし
お寺や仏像のいわれ
十輪寺はもと小鹿野町別所というところにあったが、江戸時代に焼けてこの地に移ったという。この別所には、仁王田という地名が残っているそうだ。
また、この像の材質はヒノキであるが、その材は町南部の伊豆沢から切り出されたと伝えられ、そこには仁王平という地名が現在も残るという。
拝観の環境
像は山門で風雪に耐えるうちに傷みが進み、1985年に修理を受けている。現在は山門にガラスがはめられていて保護されている。そのためガラスの写り込みで見にくいのと、高い台座上に安置されているので、それほど大きな像でないにもかかわらず見上げる角度となり、やや拝観しづらい。
仏像の印象
像高は約180センチとほぼ等身大で、仁王像としては比較的小ぶりな像である。ヒノキの寄木造で彫眼。かつては裳など華やかに彩られていたようだが、現在はそれもほとんど落ち、素地をあらわしている。
腰を曲げて体をひねっているが、それほど動きは大きくなく、安定した姿である。筋肉の表現も誇張的ではない。顔つきは特異で、異星人のようである。下から見上げると、額の盛り上がりから髻までがひとつながりに見え、魔物を倒すヒーローのように頼もしく感じられる。やや洗練されていないが、地方の仏像ならではの魅力がある。
阿形像の背に江戸前期の修理銘があるという。製作年代は室町時代ごろだが、阿形像と吽形像で若干時代が異なっている可能性もある。
さらに知りたい時は…
『仁王』、一坂太郎、中公新書、2009年
『埼玉県指定文化財調査報告書』第4集、埼玉県教育委員会、1965年