長福寺の薬師如来像
堂々とした薬師坐像
住所
いすみ市下布施757
訪問日
2010年3月29日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
JR外房線大原駅からいすみ市のバス、市内循環線(外回り)に乗車し、「硯(すずり)」で下車。乗車時間は10分くらい。
バス停から「筆掛けの槙(まき)」の案内表示が見えるので、それに従って細い道を入って行くとまもなく長福寺に着く。
拝観料
300円
お寺や仏像のいわれ
長福寺の山号は硯山という。平家打倒のために上総に渡った頼朝が立ち寄った折、この寺にあったみごとな硯を見て、硯山という山号をつけたという。また境内の大きな槙の木は筆掛けの槙と呼ばれるが、これは頼朝が筆を掛けたという伝説によるものである。
このお寺は天台宗で、かつては相当大きなお寺であったらしく、いくつもの子院を抱えていたそうだ。それらはみな廃絶し、それぞれのお寺にあった仏像が移されてきた。本堂中央に安置されるのは室町時代の阿弥陀三尊像だが、向って右側の脇室には多くの客仏が安置されている。
本堂の欄間および須弥壇には「波の伊八」の彫刻があり、有名である。
拝観の環境
近くより大変よく拝観できる。
仏像の印象
脇室の多くの仏像の中で、薬師如来坐像は飛び抜けて堂々とした像である。
像高や約1メートルの坐像で、ヒノキの一木造または割矧(わりは)ぎ造。
肉髻は大きく、円筒形状に力強く盛り上がっていて、帽子のようである。目は細い。上半身は四角ばり、厚みがあって、いかにも頼もしい。
量感あるつくりに平安前期彫刻の要素を見て、そこに穏やかさが加わった平安後期の作であろうか。
一方、脚部はやや低く、衣文の線は平行に近く、変化に乏しいように思う。膝の裏に1250年(鎌倉中期)の修理銘があり、脚部はこの時に補われたものなのかもしれない。ほかに像内に江戸前期の修理銘がある。
さらに知りたい時は…
『南総天台の仏像・仏画』1、天台宗南総教区研修所、2017年
『千葉県の歴史 通史編 古代』2、千葉県、2001年
『房総の神と仏』、千葉市美術館、1999年