東明寺の薬師如来像、十二神将像

平安の薬師像と鎌倉の十二神将

住所
富津市湊220


訪問日 
2021年12月5日


この仏像の姿は(外部リンク)
東明寺ホームページ



拝観までの道
東明寺(とうみょうじ)は内房線の上総湊駅下車、南へ徒歩約15分。
拝観は事前連絡必要。


拝観料
志納

 


お寺や仏像のいわれなど
真言宗寺院。
本尊の薬師如来像はカヤの一木造。像高は210センチを越える大きな像。行基作と伝えるが、平安時代の中期から後期にかけての像である。


拝観の環境
本堂内近くで拝観させていただける。
薬師如来像は大きな像のため、高い壇に安置することができず、立つ場所を下げておかれているので、台座や足先は見ることができない。右側の横顔は見ることができる。
十二神将像は本尊後陣に安置され、ご住職の案内で拝観することができた。


仏像の印象
本尊の薬師如来像はお椀を伏せたような立派な盛り上がりを見せる肉髻と、やはりまるまるとしたほおが印象的である。螺髪の粒は小さくていねいに整う。目はややつり上がり気味だが、優しい伏し目がちである。鼻の下、唇、あごは小さくつくらえているが、あごは力強く刻まれている。眉や目は若干左右対称をくずし、地方的な造像とも見え、またそれゆえに動きのある表情が見えてもいる。

なで肩で薬壷を持つ左手は自然な角度で前に出し、右手は胸の横でてのひらをこちらに向ける。胸、腹、太ももはボリューム感があまりなく控えめで、衣のひだも大人しい。
一木造でカヤの大木の生命力を取り組んだ大胆な全体は平安時代前期の特色を引き継ぎ、浅い衣文線や穏やかな顔つきは平安時代中期以後の仏像の特色をあらわしている。

十二神将像は像高60センチ代~80センチ強。鎌倉時代の像。ヒノキの割矧ぎ造だが、腰から体勢を曲げている像は上半身、下半身で別材を使っているそうだ。玉眼を用いる。
顔は小さめで、上半身を長く、ことにお腹を大きくて丸くつくる。体勢はバランスがよくとれているが、若干変化に乏しい感もある。口を開け怒号する像、遠望するようにしている像、手を前で交差する像、矢を調べるしぐさの像、左右の足先を大きく開いて立つ像など、よく見るポーズの像が集結しており、この時期を代表する十二神将像である。


その他
ほかに本堂内には破損が進んだ薬師像。これは本尊の前立ち像であったと伝える。やはり平安時代の地蔵菩薩像は厨子入りで秘仏。辰年の春に開帳されているとのこと。


さらに知りたい時は…
『仏像半島』(展覧会図録)、千葉市美術館、2013年


仏像探訪記/千葉県