大門の鉄造仏頭
1メートル以上もある菩薩形頭部
住所
いすみ市山田4047
訪問日
2010年3月29日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
最寄り駅はいすみ鉄道の国吉駅で、駅から歩くと40分くらい。なお、同駅のすぐ前にはタクシー会社もある。
拝観料
志納
お堂や仏像のいわれ
地区(大門区)の管理となっている鉄造の仏頭。鎌倉時代の後・末期ごろの作と推定されている。
大日堂とよばれる耐火建築のお堂に安置されているが、かつては茅葺きで、堂内の厨子中にあった。仏頭はスギの板を台座にしているが、これはその当時からのものだそうだ。
首から上、髪の生え際までの像で、その高さは1メートル以上ある。もし全身が造られていたら丈六を越え、2丈かそれ以上の大きさとなると思われる。これほどの大きさの鉄の仏像がどうしてこの地に伝来しているのか、またなぜ頭部だけなのかなど記録はなく、わからない。
拝観の環境
お堂は覗けるようになっていて、ボタンを押すと照明がともる。やや距離があるが、見えないことはない。
事前に市の教育委員会を通してお願いすれば、管理している区長さんが開扉してくださる。間近で、また側面からもよく拝観できる。
*2013年8月より、毎月第1日曜日(10時から15時まで)に開扉されることになった。
仏像の印象
髪部は失われているが、像の上部に残る生え際や後頭部を見ると螺髪でなく、菩薩形であることがわかる。お堂が「大日堂」と呼ばれてきたことから、大日如来像として伝来した像と思われる。
個性的な顔つきで、目や鼻筋は細い。ほお骨のところは張り、口もとは引き締まっているが、顎がやや貧弱であるためか、ふくよかさが感じられない。全体にやや平板な印象である。
鋳上がりはまことによく、鉄仏の中でも最も状態のよい像のひとつと思う。側面にはバリ(へりにはみ出した部分)が残るが、それが細く、均一であることからも鋳造技術の高さがわかる。
顔の幅と奥行きを比較するとほぼ同じで、上から見るとほぼ円形をしているようだ。人の顔もそうだが、一般には仏像の頭は面幅よりも面奥が長いのだが、この像はその点かなり特殊で、円形の断面がそのまま下にすぼまっていく。仏像の制作よりも他の製品をもっぱらにしていた職人によって鋳造されたものなのかもしれない。
さらに知りたい時は…
『仏像半島』(展覧会図録)、千葉市美術館、2013年
『日本の鉄仏』、佐藤昭夫ほか、小学館、1980年
「千葉県大原町所在の鉄造菩薩形頭部について」(『美術史』58)、佐藤昭夫、1965年9月